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週末に思いを馳せる

 一方リョウは、せっかく週末の休みにアヤがスキーに付き合ってくれないことにしばらく拗ねていたが、気持ちをを切りかえた。会えるだけで嬉しいもんな、贅沢言うてたらあかん、と仕切り直した。  この週末が年内最後のデートとなるだろう。クリスマス、カウントダウン、お正月、全部一気に味わえはしないものかと欲張りな思案に暮れながら、三日後に迫る出発の金曜を楽しみに過ごしていた。もちろん金曜に残業や土日に休日出勤になんてことになったらかなわないので、仕事はいつも以上に張り切ってこなしたし、そうならないための根回しも完璧。  イルミネーションや洒落たディナーに出かける定番のデートが大好きなリョウだけれど、今年はアヤに合わせてみよう、という考えが浮かんだ。生クリームたっぷりのクリスマスケーキやローストチキン、ちょっといいワインや小洒落たオードブルなんかを調達して、部屋でまったりと過ごすのも、それはそれでとてもいい。 「嬉しそうですね」  慌ててリョウが口を押さえた。無意識にニヤけてしまっていたようだ。声をかけてきたのは後輩の永倉。部署は違うが一緒に仕事をする機会が多く、真面目で努力家な彼をリョウもかわいがっている。 「週末ですもんね。デートですか」 「い、いやぁ、そんなんちゃうよ~」  永倉はそれ以上問いただすことはしなかったが、リョウの様子を見れば一目瞭然だった。  リョウはそんなことお構いなしに、明日になったら駅前の店でケーキを予約しようとか、ネット通販でワインを買ってアヤの部屋に直接送ろうとか、おうちデートの段取りに思いを馳せるのだった。

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