4 / 11

やっぱり雪は嫌いだ

 いよいよ明晩、リョウがやってくる。仕事が終わり次第新幹線に飛び乗って。いつものように改札を出て、駅前のターミナルから、はち切れんばかりの笑顔が飛び出すのだろう。  恋人の、曇りのない満面の笑みを思い出せば、釣られてアヤの口端も上がる。 「お疲れ様です」  声をかけられて、慌てて元の顔に戻す。声の主はアルバイトスタッフの小林だ。以前アヤのパソコンを修理しに家まで来てもらい、その時リョウとも鉢合わせして、恋愛関係にあることを公表している。 「明日、降るみたいですよ」 「みたいだね」 「それもかなり」 「……」  新幹線は動くだろうか。いやそれよりも、無事休めるのだろうか。大雪に見舞われスタッフに欠員が出れば、当然社員、それも肩書が上の者からフォローに入らなければならない。  ……休めなくても、普段通りか。  その時はその時で、いつものように夜まで部屋で留守番をしていてもらうしかない。今はそれより仕事のことを考えないと。  と思っていたら、胸ポケットに収まっているスマートフォンが振動した。支配人からだ。嫌な予感しかしない。 「お疲れ様です、佐倉です」 「妻の父が亡くなってね、これから九州へ発つことになった。私は通夜だけ出て先に戻ってくるから、明日の夕方の出勤には間に合うようにするよ」 「承知いたしました。お悔やみ申し上げますと奥様にも」 「うん。その間、よろしく頼むね」  どうしても、嫌な予感しかしない。

ともだちにシェアしよう!