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準備は万端
リョウは美容院帰り、足取り軽く家路についていた。仕事のあと、行きつけの美容院でカットとカラーとパーマのフルコースを施してきた。きれいに刈られたうなじ、ふわふわしたトップの髪はブルーブラック。いつも通りを保つのも、なかなか手間暇かかるものだ。だがこれだって大事な、デートの準備。
ワインの注文は済んだし、ケーキの予約もばっちり。明日の仕事帰りに受け取って、一旦家で着替えたら、新大阪へ出発だ。
タブレットにはクリスマス・ソングのプレイリストも作成済み。アヤが嫌いな人混みと寒いところを今年は避けて、暖かな部屋で二人きり、キャンドルでも灯しながらムード満点でまったりイチャイチャしながら夜を明かせばいい。
あと一日頑張れば、明日の今頃は。
そしていよいよ当日。起きたら雪が積もっていた。新幹線が止まらないだろうか、という心配は全く頭になかった。なぜなら大阪での積雪は、たいてい午前中に全て溶け切るのが常だから。それよりも、どうせなら一日遅く降ってくれたら、アヤと一緒に見られたのに、と思うリョウだった。
浮き足立つのをおさえながら仕事にあたった。何もかも順調、抜かりはない。あとは終業時刻までいつものように、何事もなく、時間だけが過ぎてくれたらそれでいい。
昼休み、スマートフォンを見れば、アヤからの着信が残っている。こんな時間に珍しい、どうしたんだろう。すぐさま折り返すことにした。
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