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第1話

ねえ、お願い。 心配だから病院へ行こう。 ちゃんと検査しよう。 僕は君にそういってすがる。 大事な君のことだから、万全にしておきたいんだ。 どんな些細なことも、放っておきたくないんだよ。 もしも、手遅れになってしまったら怖いじゃないか。 ねえ、わかって。 大事なんだ。 君だけ。 僕の人生に必要なのは、君だけ。 他には何もいらない。 君がずっといてくれればいい。 それくらい君が好き。 大好き。 愛してる。 だから、お願い。 涙ながらにかき口説いた。 プライドも外聞もかなぐり捨てた。 君が訴える不調を何とかするほうがずっと大事だ。 この手にある、あらゆる財と称賛をなげうってもいい。 君が笑って居てくれればいい。 「わかった。わかったから、泣くなよ。これじゃあ、調子悪いのがどっちか、わからないな」 君は苦笑いを浮かべて僕の髪を撫でる。 君の掌が好き。 甘い香りが好き。 君のすべてが好き。 しぶしぶ君が病院で検査を受けてその結果が出るまで、僕は途方に暮れていた。 君を失うことになったらどうしようかと思って、何も手につかなかった。 検査結果を聞いた君は、仕方ないなあというように笑って、僕に告げた。 「正体見たり、枯れ尾花、だったよ。大丈夫。心配せずにしたいようにしたらいいってさ」

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