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第6話

月曜日。 当然ながらろくに寝れない休日を過ごしたため、寝不足の頭でフラフラと学校に向かっていた。 鈴原達が帰った後、久山達に聞けば皆鈴原の恋人のことを知ってたらしい。 独占欲が強くて、彼の友人関係にまで干渉するくらい束縛してるのだとか。 自分だけのものだと誰にも紹介したがらず、久山以外本人を見たのは一昨日が初めてだったらしい。 僕があまりにも鈴原好きオーラを出してるから、恋人の存在を言うに言えなかったって言ってた。 僕だけが知らなかった事実。 悔しくて、思わず唇を噛んだ。 思い出すのは一昨日見たあの笑み。 今まで僕が見てたのは鈴原の表面でしかなかったのだと思い知らされた。 「っ……」 ふと上げた視界に、先を歩く人物を捉えた。 いつも会いたいと思っていた人。 「鈴原っ…」 静かな中で呟いたから、小さな声でもしっかり届いたようだった。 立ち止まった鈴原がゆっくりと振り返る。 「あぁ、おはよう古矢」 返事ができなかった。 鈴原の全身から『雄』の匂いがする。 いつもの笑顔のはずなのに、知らない男の人みたいだ。 「古矢?」 「、あ……」 身体ごと僕に向けた鈴原の首に釘付けになる。 紅い、付けられたばかりのような、鮮やかな痕。 気だるげな表情に纏う壮絶な色気。 あの後彼らに何があったかなんて明白で。 僕には見せたこともない顔で、彼に触れていたんだと思うとどうしようもない悔しさが溢れた。 なんで、彼が恋人なの。 なんで、僕じゃないの。 「……好き」 気づいたら、口に出してた。 視界が歪んでる気がしたけど、気にしてる余裕もなかった。 「鈴原が好きっ。あの人と恋人だって分かってるけど、諦められない!好きなの!どうすれば僕」 「無理。諦めて」 遮られた言葉に息をのむ。 抑揚のない声、見たこともない冷たい表情。 「秀以外を好きになるなんてあり得ないから。告白されても困るな」 「、そ、んな…」 冷たい声音に言葉が続かない。 「俺のことは諦めて。これ以上言うなら、迷惑だから古矢とは話さないよ」 踵を返して歩き出した鈴原を呆然と見送る。 次々溢れる涙を拭うこともできない。 何で優しくしてくれてたのとか、何で恋人の存在を言ってくれなかったのとか、詰め寄りたいことが沢山あったのに一歩も足を動かすことができなかった。

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