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第5話
呆然と彼を見送る僕の耳に久山の呆れた声が入ってきた。
「相変わらずだな、敦志」
「だってあいつら秀を狙ってんだよね。誰のものか分からせないとさ」
「独占欲強すぎると嫌われるぞー」
「まさか。嫌わせる隙すら与えないよ」
「……ねぇ」
たまらず、2人の会話に割り込んだ。
鈴原と彼の関係を信じたくなんかなかった。
「どうしたの?」
「す、鈴原と彼って、幼なじみなんだよね…?」
今の会話は何かの冗談だって言って欲しかった。
いつもの僕の好きな笑顔で――
「兼、恋人」
頭が真っ白になった。
「恋、人……?」
モテるのは知ってた。
何回も告白場面見てたし。
「そう、秀は俺だけの可愛い子だよ」
でもいつも断ってたし、誰かと付き合っているなんて話聞かなかった。
だから、チャンスがあるって思ってたのに。
「っつか、謎だったんだけど。よく秀が別の高校行くの許したな」
「ん?あぁ、だって……」
そう言い掛けて見せた鈴原の笑顔は
「学校生活くらい解放してあげないと。四六時中俺に縛られてるなんて、可哀想じゃない」
僕が今まで見たこともない、ゾクリとするものだった。
「敦志、ごめんお待たせ」
小走りで彼が鈴原の前までかけてきた。
にこりと笑った鈴原が彼の腰へ腕を回す。
「10秒の遅刻」
「え、嘘っ」
「ふふ、いいよ許してあげる」
彼の額に唇を落として、鈴原が身体の向きを変えた。
「じゃ、俺ら行くから」
「おー、また月曜なー」
「またなー」
久山達が手を振り見送る中、僕だけが呆然と鈴原の背中を見続けた。
「……だから言ったろ。やめとけって」
久山がそう呟いたのを、どこか遠くで聞いていた。
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