4 / 7

第4話

久山がとめるのも無視して駆け寄る。 「鈴原っ」 「…あれ、古矢」 鈴原は意外だといった風に瞠目した。 駆け寄った勢いで鈴原の腕に抱きつく。 遅れて、久山達もやってきた。 「もー、鈴原もあの映画見に来てたの?だったら一緒に来れたじゃん」 「あぁ、(しゅう)と観る約束してたから」 「え」 背が高い鈴原に隠れて見えなかった。 鈴原の向こうに、僕と大して変わらないくらいの小柄な人がいる。 「あ……」 見覚えがあった。 この前の朝、鈴原と一緒にいた幼なじみだ。 「こんにちは」 ふわりとした笑顔はどこか小動物を連想させる可愛らしさがあった。 反射的に僕も笑顔を返したけど、僕よりも優先された彼にふつふつと敵対心がわいてくる。 妙に鈴原に密着してるのが気に入らない。 「秀ちゃん、久しぶりー」 「久山くんだ、久しぶりー」 「元気そうだねー」 「久山くんも相変わらずチャラいなー」 久山と親しげに挨拶を交わしていた彼がその向こうを見て、あっと声をあげた。 「学校の友達だ。ちょっと行ってくるね」 嬉しそうな笑顔で鈴原に告げ、学校の友達らしいグループへ駆け寄ろうとする彼。 むしろそのままそいつらと遊べばいいのに。 鈴原をお昼に誘うチャンスだ、と口を開くより先に鈴原が動いた。 「あっ」 彼が鈴原を通り過ぎる前に鈴原が彼の腰に腕を回した。 鈴原の頭が彼の首もとに近づく。 「ぃ、……」 「5分で戻ってくるんだよ?」 彼の首にくっきりと紅い痕がついたのを確認してから、鈴原がにっこり笑って彼の背中を押した。 一度鈴原の顔を見た彼が首を押さえながら走っていく。 何が起こったのか理解ができない。

ともだちにシェアしよう!