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第3話
「あー、面白かった!」
「古矢ホント好きだよな、こーゆー映画」
「好き。スカッとするじゃんっ」
「裕、顔に似合わずアクション好きだよなー」
「余計なお世話だよ」
よく晴れた土曜日。
先週から上映が開始された映画をクラスの友達と見に来ていた。
さっき見終わってまさにシアターから出てきたところだ。
今日いるのは割と日頃から遊ぶやつら。
でも、その中に鈴原はいない。
もともと休日の付き合いは良くなかったけど、今日くらいは一緒に遊びたかったなと思う。
鈴原もこの映画が楽しみだって言ってたから、一緒に見て盛り上がりたかったのに。
本当、残念。
「あーぁ、鈴原もいたらなぁ……」
我知らず洩らした言葉に隣を歩いていた久山が反応した。
「……なぁ、古矢。お前、敦志 のこと本気だったりする?」
敦志っていうのは鈴原の名前。
久山は鈴原と小学校からの友達だって言ってた。
「本気って?好きかってこと?」
僕もその頃から鈴原と知り合いたかったな。
あぁでも、そんな古くからだと逆に恋人になるの難しいかなぁ。
「そう。そういう意味で好きとか、言う?」
「好きだけど」
「……」
なんとも微妙な顔で久山が僕を見てきた。
男子校っていう空間には慣れてるだろうし、男が恋愛対象ってことに偏見はないと思ったけど。
しかも僕、気持ち隠すとかしてないから今更な質問じゃない?
眉を寄せて見れば久山は難しい顔したまま目を逸らした。
「何さ」
「いや……あいつはやめとけ」
…………は?
「何その『俺がいるじゃん』が続きそうな台詞」
久山まさか僕のことそういう目で……
「違う。断じて違う」
「なんだ」
ま、そっか。久山彼女がいるって言ってたし。
「そうじゃなくて、あいつと付き合いたいって望みはやめた方がいいってこと」
「何でだよ」
「むしろ好きになるのすらやめとけ。あいつヤバいから」
「はぁ?ますます意味わかんない。何でそんなこと」
「あ、鈴原じゃん」
意味不明なことを言う久山に噛みつこうとしたのを遮ったのは、僕が会いたかった人の名前。
人混みで見つけづらかったけど、壁の方に立っているのは確かに鈴原だった。
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