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第10話

結婚してから、夫以外の唇の感触を味わうなんてこと誰が予想していただろうか。 熱い吐息と肉厚な舌に口内を掻き回されながら、里都は必死に永瀬の腕にしがみついていた。 頭の中は永瀬と自分の唾液の交わるいやらしい音が、プールの水音と合わさって脳を蕩かせている。 普段夫としているキスよりも何倍も感じてしまうのは、これがイケナイ事だからだろうか。 それとも相手が永瀬だからだろうか。 しかし角度を変える毎に深く濃厚になる口付けに里都の思考はぐずぐずにされ、結局何も考えられなくなっていく。 「おっと…大丈夫ですか」 力の抜けた里都を、永瀬の逞しい腕が支えた。 「僕が支えてるから、望月さんは好きに感じてていいですよ」 永瀬は里都の耳元で甘く囁くと、耳朶をペロリと舐め上げた。 無理強いをしないどこまでも優しい扱いに、肉体だけでなく心も虜になっていく。 いっその事ガツガツと犯してくれたらいいのにと思った。 無理矢理組み敷いていつかの田中のように乱暴に扱ってくれたら、心臓が口から飛び出しそうになるほどドキドキはしないかもしれない。 自信は全くないけれど。 不安定な水中にもかかわらず、永瀬は絶妙なバランス感覚で里都を片手で支えながら、もう片方の手で里都の乳首に触れてきた。 「ぁ…っんっ」 その指先は柔らかなタッチで乳頭を掠めたかと思うと、突然弾いたり、摘んだりしてくる。 絶妙なタッチで左右の粒を代わる代わる弄られて、そこはあっという間に硬くしこると胸の先でぷっくりと熟れた。 色素の薄い肌の上、水に濡れながらも紅く色づく自分の乳首をこんなにもいやらしいと思ったことがあっただろうか。 その間にも耳や首筋を嬲られ、里都の肉体はビクビクと打ち震える。 その動きに合わせて水面はチャプチャプと揺れ、唇からは次第に甘ったるい声が漏れはじめた。 「あ…っぁんんっ」 しかしすぐにハッと我に返る。 「待って…ここって、誰か来たりしませんか…」 里都は小声で訊ねた。 ここはプール。 いつ、向こうの通路からここを利用する人がやって来てもおかしくない状況だ。 「大丈夫です。今日ここを使うのは僕らが最後ですから」 「で、でも…他のスタッフの人が…」 「安心してください。僕がいるからここには来ませんよ。それにたとえ誰か来ても、水の中だから見えないはずです。だからここに入ったんですよ」 永瀬はそう言って爽やかに笑うと、水着の上から里都の尻を撫でてきた。 「あ…っ」 「すごく引き締まっていいお尻になりましたね、望月さん」 永瀬の手が双丘を鷲掴み、まるく円を描くように揉んでいく。 「んんっ…っ、あ、ありがとう…ございます」 「ここのラインもすごく綺麗です」 今度は指先が際どいライン作っている股周りをなぞっていく。 その指先が、既に膨らみ、狭い水着の中で窮屈そうにしている陰茎を僅かに掠った。 「はっ…っ…あ…っ」 里都は思わず永瀬の腕にしがみついた。 まだ直接触られてもいないのに、彼が自分の性器に触れたというだけであり得ないほど背筋がゾクゾクとしてしまう。 その反応を楽しむように、永瀬の手の甲が悪戯に膨らみを擦り上げてきた。 「コーチ…っあ…っぁ…」 里都は思わず縋るような眼差しで永瀬を見上げた。 きっと今の自分はとんでもなくいやらしい顔をして、永瀬のことを見ているに違いない。 男を誘う、媚びるような眼差し。 卑しい男だと思われるかもしれない。 けれど欲望を溜めた肉体はそれでもいいと喚いている。 触って、弄って、めちゃくちゃにして欲しい。 永瀬の手で身体で、里都の何もかもを奪って欲しいのだ。 「ここ、もっと触って欲しいです?」 永瀬が訊ねてきた。 ここ、といった場所は勃起した陰茎だった。 里都は恥じらいながらもコクコクと頷く。 「じゃあそこのタラップに座ってください」 里都は言われた通り、プールサイドへ登るための梯子に腰掛けた。 「ここ、ちゃんと握ってて。危ないから離しちゃだめですよ」 里都の手にタラップの外側の部分をしっかり握らせると、永瀬は里都の前に立ち、閉じていた脚をかばっと開いた。

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