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ずっと君だけを(1)

  俺には、ずっと片想いをしていた人がいた。 勉強はもちろん、スポーツもできるし、先生やクラスメイトからの信頼も厚くて。 何もかも完璧で、俺が手を伸ばしたところで届くことはないような、そんな人。 俺が追いつこうと頑張っても頑張っても、彼はいつも余裕で数歩前を歩いていて、背中に触れようと無理に手を伸ばしてみても、やっぱりうまくいかなくて転んでばかり。 それが悔しくて悔しくて。 いつも彼の後ろを、ついて回っているのに。 彼のことを、尊敬していて好きでたまらないのに。 どうしてもそれとは、反対の言動ばかりをしてしまう。 そうして彼に対して抱いている色んな感情を素直に言えないまま、みっともない抵抗ばかりを繰り返していたら、いつの間にかクラスのみんなは、そんな俺を“デレない奥さん”と呼ぶようになった。 「奥さんさぁ、たまには素直になったらどうなの?」 「うるさいっ」 「旦那様に、愛想尽かされちゃいますよ?」 「あいつは旦那じゃない!」 「でも好きなんでしょ?」 「……っ、だまれ!」 奥さんだなんて、そりゃあ好きな人の相手だったら嬉しいに決まっているけれど、“素直になったら?”とか“愛想尽かされちゃうよ”とか、結局は奥さんという設定にされても、俺がまた彼に追いつくために必死になる側なんだって思ったら余計に悔しい。 だって好きだから、追いつきたいって思うんだもの。 でも頑張ってるのは俺だけだから、つまりは俺の一方的な感情でしかないんだって、周りからも言われてるみたいで。

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