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ずっと君だけを(2)

だから俺は、彼に言ってやったんだ。困らせてやりたくて、「お前のことが好きだ」って。 俺が彼のことでいっぱい悩んでいるみたいに彼も、俺のことでいっぱい悩めばいいんだって、そう思ったから。 だけど、それなのに。 彼は、ふはっと嬉しそうに微笑んで、それから低く優しいその声で一言「ねぇ、 永遠(とわ)。本当の、俺の奥さんになってくれるの?」って。 ばかじゃないのって、そう思った。ばかだよ、ばかすぎる。だってね、いつも反抗してばかりの俺が、しかも男が、好きだって言ったんだよ。 もっと悩むべきでしょう? 悩んでそれから、キモいって、俺に向かって叫べば良かったんだ。 男とかあり得ないわって、軽蔑してくれれば良かった。 そうして俺から離れて行ってくれれば、“逃げたお前”に“俺は勝った”ことになるじゃんか。 振られても、そうやってプライド守れたじゃん。 あーあ、また負けちゃったんだ。 だって、そんなこと言われたら俺は「うん」しか言えない。   本気でそうやって言ってくれた彼に「ばかじゃん。冗談に決まってんだろ」って、自分の気持ちを押し殺して嘘をついてしまえば、騙したとしても勝てたのかもしれない。 でも彼が、優しく抱きしめたりなんかするから。頭を、撫でてくれたりなんかするから。 ただでさえ大好きなのだからもう、「うん」としか返せない。 嬉しいけれど、悔しい。 “追いつく”に加えて“嫌われないように”って、今まで以上に頑張らなきゃいけなくなってしまった。 これじゃあ、いつまで経っても彼の隣には並べないや。 ……でも。 「(こう)ちゃん……」 だめだめな俺でも“好き”の気持ちだけは、負けてないってそう思うんだ。

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