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愛の代償(4)
「君のせいではないよ。……これは、天命だ」
「……っ、あ、」
「こうなることは分かっていた。私が愛する神によって、いつかはこんな日が訪れると。……それを承知で、私は、君を愛したんだ。神以上に、君を愛したんだよ」
「……う、ぁ、」
彼からの愛が欲しいと願った。ただの一度でいいから、私だけに、彼の愛情を注いで欲しいと。あぁ……、こんな形で叶うなんて。
「“聖人に夢なし”などと言うけれど、私は、いつも君の夢ばかり見ていたよ」
彼の頬を涙が伝う。私の手にぽとりと落ちたそれに、また胸が締め付けられた。強い彼の涙を見たのは初めてで、そうさせたのは私なのだから。
「……っ、あ、」
「転生したら、君か私が神になろう。そうすれば、一生愛を与え、また与えられる」
「う、っ、あ」
「……ね?」
「……、ひっ、う、」
止まらない私の涙を、何度も彼が拭ってくれる。その指先は冷たいけれど、指先から優しさが温もりとなって伝わる。
別の世であれば、彼への愛は罪にはならなかったのだろうか。互いに求め合うことを、許されたのだろうか。
「……ねぇ、君。どうせなら、最後まで神に背こう」
“―――――――――”
悲しげに笑った彼の手に、自分の指を迷いなく絡めた。 少しずつ距離を縮め、唇を重ねる。血の味が広がる口内で絡め合った舌は、冷たい体とは違って温かかった。
「また、来世で、」
最後にもう一度、深いキスをして。
それから──……。
「おい、時間だ。……っ!」
日が沈む頃、門番が牢獄に入ると、舌を噛んで死んだ男が二人、寄り添うようにして、そこにいた。
END
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