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バカ+可愛い=?(8)
「もしかして、」
「え? 何んだよ……」
「成瀬も、バレンタインパワーに、やられたんじゃねぇ……?」
「あんまりふざけると、口を縫うぞ」
可愛いとか、俺がバカだろ。バカがうつってしまった。バカは伝染するものなのか。へへっと、さっきまで泣いてたくせになぜか笑い出す宇佐が憎い。
「調子に乗るとチョコ受け取ってやらないからな」
「……渡したいけど、用意してないから。チョコはないよ」
「はぁ? お前調子乗りすぎ」
「あ、成瀬。チョコが唇に付いてる」
宇佐が、親指の腹でゆっくりと俺の唇に触れた。ほら、と見せられたそこには溶けたチョコが付いている。そして宇佐はそれを、ぺろりと舐めて、また間接キスしたって笑った。
「お前、怖い」
「は? どこが?」
「怖い……」
「成瀬、意味分からねぇ」
「お前が意味分からねぇよ」
いっそのこと、宇佐の言うバレンタインパワーというものやらに、やられてしまったとそう思いこみたい気もしたけれど、どちらにせよ宇佐にやられてしまったってことじゃあないかって、頭を抱えた。
明日になれば元通りになっているはずだと、そんな期待を持てる程の余裕はないし、きっとこれからもこうしてやっぱりバカの相手をしていかなきゃいけないんだろうって、そう思っている時点でもう俺の負けなわけで。……宇佐のこと、絶対に突き放すことはできないし。
「成瀬」
「なに、」
「へへっ、」
「何がおかしいんだよ。キモいから笑うな」
「へへへっ、」
俺は宇佐から目を逸らし、とにかくチョコを口いっぱいに詰め込んだ。
END
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