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バカ+可愛い=?(7)

「あーはいはい、間違えました。宇佐は可愛くない」 「可愛く、ない、のも、やだ……」 「はぁ?」 じゃあどう言えばいいのって宇佐のおでこを弾く。コツンといい音がした。宇佐は俺の制服を掴んでいた手を離し、痛むおでこへと持っていった。泣きやんでたくせに、宇佐の目にはまた涙が溜まる。 「なぁ、宇佐」 「なに」 「お前ってそんなに泣き虫だったのか?」 「……ちがっ、バレンタイン、パワーだ、」 「いやそれ絶対違うと思うわ」 今日は一段とバカでうるさくてどうしようもないな。そう呟くと宇佐は、ゴシゴシと涙を拭いた。目元が赤くなって、せっかくの顔が台無し。 「お前、女子の前で泣くなよ? さらにモテなくなるぞ」 「モテなくて、いい」 「モテたいモテたいっていつも言ってるじゃん」 何を今さら意地を張る必要があるのか。くすりと笑うと、宇佐が下唇を突きだした。目元だけじゃなくて、頬も赤くなる。 「だからそれは、成瀬に、ってこと」 「はぁ? んだよそれ。……可愛いじゃん」 「俺って、別に、可愛くはない」 「もういいよそれは、もういいから黙れ。俺も混乱してきたわ。お前は本当は可愛くないはずなのに。ただのバカなのに。バカの宇佐なのに」 鞄にしまったチョコを取り出した。袋から出し、口に詰め込む。宇佐と長いこと変なやり取りをしたせいで疲れているんだ。糖分を取らなきゃって。申し訳ないけど味わうことなく、さっきのブラウニーと同じように口に含んでいく。

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