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バカ+可愛い=?(6)
「いやまじで宇佐くん。嫉妬は醜いよ?」
「……ばっか、そんなんじゃねぇよ」
「は?」
「俺だって女子みたいに、好きな奴にチョコ渡したかったんだよ。お前に、チョコ、渡したかった……っ」
俺にしか聞こえないくらいの小声で。宇佐はそう言って目に涙を溜めた。ちょっと待って、バカのすることは本当に分からない。
「宇佐……?」
「成瀬、俺、」
さっきまで腕をつついていたくせに、それをやめて俺の制服を遠慮がちに握った。……あぁもう! 宇佐が全く分からない。宇佐は俺のこと好きだったの? そういう意味で? にしても急すぎるだろこれは。
「好きって、本命って、チョコ渡せるのズルい」
「……宇佐、」
「俺もお前に渡したい」
チョコ渡したいと、そう繰り返して顔を歪める。とうとう溜まった涙が頬を伝って机に落ちていった。
「じゃあ渡せばいいだろ」
「好きって言って、渡せるわけないだろ……!」
「もう今それと同じことやってるじゃん」
「……あっ、俺、」
「無自覚まじかよ」
ぽたぽた落ちていた涙が止まった。宇佐の顔が青ざめていく。色々忙しい奴だと、泣いてる宇佐を前にして笑えてきた。バカにして笑ってしまうんじゃなくて。
宇佐ってば、どうしてか今、気持ちがはじけてしまったんだろうな。
「……可愛いんじゃん」
チョコたくさん貰えてズルいじゃなくて、チョコを渡せるのがズルいって、そう言いながら泣く奴なんて宇佐くらいしかいないだろう。……変な奴。
「成瀬、俺、可愛いとか、求めてないって、」
「いやだから俺もお前に可愛さは求めてないって」
「でも、可愛いって、」
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