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嘘? 本当?(1)
「久しぶり」
「ひ、久しぶり」
改札を出てすぐに黒沢を見つけ、緩んだ頬のまま彼の前に立った。とんとんと爪先を地面に当てながら、手を袖の中にいれて後ろで組む。
「と言っても二週間前に会ってるんだけどな」
「うん……」
二週間会わないだけでもう随分長いこと会っていないように感じる、と黒沢は優しく笑った。そんなことを言ってもらえるなんて、黒沢にとって俺との時間は大切なものだと思ってもらえていると、そう考えてもいいのだろうか。緩んでいた頬がまた、緩んでいく。俺は後ろに手を回すのをやめ、甲で口元を隠した。
今はまだ春休みで、お互いバイトやら帰省やらで忙しく、遊ぶにしてもなかなか日程が合わない。学校がある日はほぼ毎日顔を合わせているから変な感じがする。
でもこの少しの“久しぶり”という違和感が反対に特別な何かをくれているのかもしれない。彼が、いつもの何倍もかっこよく見える。
「黒沢さ、見ないうちにまたかっこよくなってる……」
「お? なになに? 褒めても何も出ないぞ。……ってまぁお昼くらいなら奢ってやってもいいけど」
「ばか……! そんなつもりで言ったんじゃないんだけど」
「ふはっ、知ってるよ。でも今日遊んでくれるお礼にお昼奢ってやる」
“すごく会いたかった”と、まるで恋人にでも言うかのように、黒沢は微笑みながらそんなことを言った。大きな手でわしゃわしゃと俺の髪に触れる。心臓が口から出そうなくらいに緊張してきて、俺は黒沢の胸元を強く押して離れた。
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