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見つめたその先に。(1)

机に肘をついてぼんやりと窓の外を眺める彼を、僕は少し離れた席からいつもこっそりと見つめている。面白い何かがあるわけでもないのに、どうしてか吸い寄せられるようにその姿が視界に入ってくるのだ。そうして彼が僕の世界にやってくると、同じように机に肘をついた僕はもう、彼から目が逸らせない。 つまらなさそうに外を見ていたり、眠そうに欠伸をしたり。そうかと思えば何か良いことがあったのか口元が緩んでいたり、何かを思い出して笑っていたり。周りからは無表情で考えていることが分からないと言われる彼なのに、僕には彼の表情がいつも違って見えるのだ。もちろん何となくであって、はっきりとは分からないけれど。 普段は他と変わらない、“友人”の一人で。挨拶を交わしたり、お昼を一緒に食べたり、テストがうまくいかなかったとか、ごく普通の会話をする仲だけれど。 こうして一人の時間に彼を見つめ、彼のことを考えている時は、この世界にはまるで僕と彼しかいないような錯覚に陥り、いつまでも二人の時間が続いて欲しいとまで願ってしまいそうになる。それに何より、胸に広がる温かな気持ちがとても心地良い。気がつけば彼の名前を静かに口にしているし、どうしようもなく彼に触れたいと、いつの間にか手に力が入る。 ……おかしいよなぁ、これじゃあまるで。 「まるで……?」 自分の考えに戸惑った。まるで、何だって言うんだ。その先に続く言葉は、有り得ないものだろう。だって、彼は男で僕も男なのだから。笑えるよ。どうしたって言うんだ。 ……それでも、彼から目が逸らせない。そうしてしまう理由にたった今、おかしな名前を付けそうになったというのに、それでも。僕の世界には彼がいる。 「ははっ、変なの」 ──変? ぽとりと漏れた自分のその言葉が、しばらく頭に響いていた。

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