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見つめたその先に。(18)

類くんの言っていたことが、今なら分かる。 『二人じゃなきゃあ、幸せになれないんだよ。俺は神井がいい。神井しかいらないの……』 二人じゃなきゃあ幸せになれないと言うのは、お互いが同じ気持ちだから言えることではあるけれど、僕だって星野くんがいいし、向き合ってしまったら星野くんしかいらないと、そう思う。おかしなことなんて何もないんだなぁ。こうして両思いになれて、みんなと同じように恋愛をしていくんだ。神井くんと類くんみたいに、僕と星野くんも仲良く過ごせるといいなぁ。 「あっ、」  「なに? 顔赤いけど」 「な、んでも、ない」 神井くんと類くんみたいにって、もうあのことまで考えてしまっているような自分の考えにたまらなく恥ずかしくなった。類くんたちと話すきっかけになったことだけれど、星野くんには言いたくないなぁ。 「保健室行く?」  「な、なな、んで……!」   「授業サボった言い訳作り……って、何考えたの?」 エロいことを想像した? という質問に、違うと首を振ったものの、この心音では誤魔化せないと分かっているから。沸騰したやかんのように自分から湯気が出ている気がして、咄嗟に頭を押さえてしまった自分の行動にさらに恥ずかしくなった。 一人で何をしているのかと彼が笑う。あの時みたいに、声を出して笑っている。その彼につられて笑って、大きな幸せを感じつつも、やっぱり泣きそうになった。これが好きだという気持ちなのかと、「さっきの砂が痛い」と誤魔化して、僕は彼の腕の中で少しだけ泣いた。 END 

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