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見つめたその先に。(17)
ゆっくりと、でもはっきりと、震えながらもそう彼に伝えた。星野くんは静かに話を聞いていたけれど、突然僕の手を握り、体育館裏へと走り出した。どうやら先生が見に来たみたいだ。この状況で授業には参加できないし、僕も精一杯走った。倒れたいほどに疲れていたのに、星野くんに手を引かれて走っている時は、足がとても軽かった。
「ここなら、多分大丈夫」
「はぁっ、」
「疲れた?」
「僕、走るの苦手で……」
立ち止まって膝に手を置き呼吸を整えていると、彼が草の上に寝転がった。そうして自分の腕を叩きながらここにおいでと僕を呼んだ。手が触れるだけでも大変なのに、いきなり腕枕は無理だと一歩下がると、彼は寝ころんだまま僕の足に自分のを引っかけた。そして倒れ込む前に僕をキャッチし、そのまま腕の中へと閉じこめる。
「掴まえた」
「……っ、」
「すごい心音だ……。それは、俺だけのもの?」
「うん……」
彼の腕の中で頷き、それから顔を上げた時、優しく微笑んでいるように見える彼に唇を奪われた。ちゅっと軽いキスを何度も繰り返され、じわりと胸に温かな気持ちが広がっていく。
キスを終えた後、彼を見られなくて、胸元に顔を押しつけると、激しく動く彼の心臓の鼓動がどくどくと響いた。
「星野くんも、ドキドキしてる……」
「ん、沢田だけのものだよ」
「……こうして相手を好きだと思うことに、おかしいも何もないね。特別な気持ちだけれど、みんな同じで当たり前のことなんだ」
「ん……、」
「星野くん、……好き」
「俺も、沢田が好きだよ」
「僕も、星野くんじゃなきゃあダメ……」
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