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見つめたその先に。(16)
「沢田のこと、ずっと特別に思ってたよ。他人には興味なかったはずなのに、お前の前だと色んな感情を押さえるのに必死だった。それくらい、沢田が俺の中を占めてた」
「……っ、」
「沢田も同じ気持ちだろうなぁとは、何となく思っていたけれど、沢田は、時々苦しそうに俺のことを見ていて、でも、それでも俺が触れるとお前の心音は素直に俺への気持ちを伝えてくれるし、しばらくはそれでいいって思っていたんだ。……それなのに、突然類や神井と絡むようになって、しかも類には……っ、」
「ほしのくん……、」
「沢田が自分の気持ちを受け入れられるまで、待とうと思ってたけど、遅かったのかな……。俺はお前じゃなきゃ嫌だよ、」
ピーッと大きな笛の音がした。休憩時間が終わったらしく、木陰で休んでいたみんながグラウンドへ走って行く。彼にも笛の音は間違いなく聞こえているし、彼も、そして僕も、いつもならすぐに走って行くのに、今はそれどころじゃあないし、何から順番に理解していけばいいのか分からなくなってしまった。
落ち着こうと、深く呼吸をする。それから星野くんの手から逃れ、きちんと正面に立った。顔を見て、話さなければと思ったから。星野くんの顔をちゃんと見なきゃって。
「僕の、気持ち、知っていたの……?」
「……確信を持っていたわけじゃあないけどな」
「僕は、ずっとこの気持ちはおかしいって、そう思っていた。だって、周りと違う。持ってはいけないものだと押し込めてきたの」
「それも、何となく分かってたよ」
「でも類くんに、自分の気持ちを自分が否定しちゃダメだって言われたんだ……。この流れは、僕が勝手に星野くんに伝えていいことじゃあないから、詳しくは言えないけれど……。だからだよ、類くんとそんな話をしたから、だから、星野くんといる時に類くんもいると、恥ずかしくてたまらなくなって余計に心臓がうるさくなる」
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