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見つめたその先に。(15)

「星野くん、ごめん。手、大丈夫……?」 「俺は大丈夫だけど、沢田は? 目の砂、大丈夫なの?」 「あ、うん……。もう奥に入っていってしまったみたい」  「そっか。でも一応洗ったほうがいいよ」 そうやって優しいことを言ってくれているのに、目線を合わせない彼に不安を覚える。大丈夫じゃあない。僕に対して怒っているよね……。 「星野くん、」 「ほら、洗って」 蛇口をひねり、水を出してくれる。でも今は、僕の目のことよりも星野くんの気持ちが気になってしかたがない。 「早く、」 それでもこうして急かされるから、僕は何も言えず、手に水を溜めゆっくりと目に近づけた。その手の水で何度か目をパチパチさせ、最後に水を止めようと蛇口に手を伸ばした時、その上に星野くんの手が重ねられた。後ろから覆い被さるように密着され、背中に彼の体温を感じた。 「星野くん……っ、僕、汗かいてる……!」 「知ってる。汗の匂いしてるし」 「くさいよ、離れて……」 「嫌だ」 もう片方の手がお腹へと回された。かと思ったら体操服の中へと手を入れられ、胸を触られる。汗ばんだ肌に、彼のひんやりとした手が吸い付いた。 「ほし、の、くんっ、」   「……この心音は、俺のものだと思ってた」 「……えっ、」 「俺が触れる度に激しくなるこの心音は、ずっと俺だけのものだと思ってた。……違った? 類にも、そうなるの……?」 「ひゃっ、」 首筋を舐め上げられる。知らない感覚に、思わず声が漏れた。今、何が起きているの? 彼は何がしたいのだろう。俺だけのものだと思ってた?隠そうとしていたこの心音も、どうしてうるさくなるのかも、全部バレていたってこと……?

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