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見つめたその先に。(14)
「沢田の手、小さくて可愛いな」
「え……」
「沢田は、手まで可愛いんだな」
「……っ、」
ただでさえパニック状態だというのに、彼はどんどん僕を困らせていく。手までって何……? 手、以外もってこと……? 僕のどこが可愛いって……。
「あ、沢田じゃん! 神井見てない?」
「類くん……!」
バッと、勢いよく星野くんの手を振り払った。さっきまで砂ぼこりが入って痛がっていた目も、奥に入り込んでしまったのか、もう痛みはなくなっている。僕が男の人を好きだということは類くんにバレているのだから気にしなくていいのかもしれないけれど、やっぱり星野くんだと知られたくはなかった。彼に手を繋がれてきっと頬も赤くなっていただろう。近づかれて、その赤くなった頬を見られ、目を覗き込まれて、僕の気持ちがバレてしまうのも怖い。
「神井くん、は、見て……ないよっ、」
「そっか、じゃああっちも探してみる。アイツ、途中で走るのやめてサボったみたいなんだよ」
「え?」
「見かけたら先生がキレてるから早く戻れって伝えてて」
「わ、分かった!」
類くんはそう言うとすぐにまた走って行ってしまった。さっきまでうるさかった心臓もだいぶ落ち着いてきた。類くんは今、神井くんのことしか見えてなかったし、僕がこんなにも動揺することはなかったんだ。
それにしても体育の先生はとても厳しいのに、結果的にはバレてしまったものの、それでもサボろうとした神井くんは強者だと変なところで感心した時、星野くんの手を振り払ってしまったことを思い出して慌てて振り返った。
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