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見つめたその先に。(13)

◇ 持久走大会まで二週間を切って、体育の授業がより厳しくなった。長距離が苦手な僕は、毎日何キロも走らされるこの時期の体育が苦痛でしかない。 彼は相変わらず淡々としていて、汗をかいていなければ、どう見ても走った後とは思えないほど。やっともらえた十分の休憩で、僕は砂まみれになってもいいからグラウンドに寝ころびたいと、そのくらいまで疲れているというのに。その余裕さを少し分けてもらいたいや。 「なぁ、沢田」   「なに?」 「靴に砂が入ったみたい。肩、貸してくれる?」 「また? 星野くん、よく砂が入るんだね」 二人の恒例となりつつあるこのやり取りにクスクスと笑ってみせるものの、脳内では飛び出そうになる心臓をどうにかしようと無意味綴りを呟いている。アイ、アエ、ウカ、アイ……と、同じ組み合わせになってしまってもおかまいなしに、必死に呟いた。それでも肩に伝わる彼の手の体温は感じてしまうから、ドキドキが収まらない。 「まだ?」   「まーだ。両方とも入ってるから」 「……また両方?」 「うん、そう。暇ならほくろ探ししててもいいけど?」 「……もう。星野くんをびっくりさせちゃうから、今日はあんなことはしないよ。……った、」 突然、風が吹いた。砂ぼこりが舞い上がって濡れた肌に張り付き、そして最悪なことに、目にまで入ってしまった。左目がイガイガしている。開いているのも痛いし、閉じるのも痛いしで、中途半端に目を開けたままピクピクしていると、もう靴の砂の処理を終えたのか、彼が僕の手を引いて歩き出した。 「水で洗おう。こするなよ」 「う、うん。ありがと……」 体操服越しに触れられていた彼の手が、今度は直に僕の手を握っている。星野くん、目じゃあなくて、胸が痛いよ。

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