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次に目が合う時には。(1)

「お前がハンドボールをやっているとこ、見に行こうかな……」 突然の彼の発言に、それまでゆっくり動いていた俺の心臓が激しく跳ねた。どうしてまたいきなりそんなことを、と不思議に思えば、どうやら今日は彼の部活が顧問の都合でなくなって暇になったらしい。そうは言っても、せっかく放課後に時間ができたのだから早く帰って自分のことをすればいいのに、何が楽しくて俺の部活を見に来るつもりなのか。 「何も楽しいことはないぞ……。他校と練習試合をするならまだしも、今日はただの練習をするだけだから」 ホームルームが終わり、騒がしい放課後。この心音が伝わってしまうかもしれないと心配をすることなくそう言って、教科書を鞄に突っ込みながら横目で彼を見れば「お前の部活を見て放課後を過ごして、終わったら久しぶりに一緒に帰りたいなぁって思ったんだよ」と頬を緩めた。 「俺の部活の方がいつも遅く終わって、それでお前は終わるのを待ってはくれないから、ずっと一緒に帰っていないし、このチャンスを逃すわけにはいくまい」 嬉しそうな表情を見せる彼の細められた目が、男にしては長めのまつげを強調させる。ふせられたその目は窓から差し込んでくる光に照らされ、色っぽさが増したように思えた。 「……そんなに一緒に帰りたかったのか」 目線を逸らし、頭をかいた。俺だって本当は一緒に帰りたいし、もっとお前と話をしたいってそう思っているよ。けれど、共有する時間が増えるのに比例して自分の気持ちが膨らんでいくのが怖いんだ。

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