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想いの先に。続編(3)
「あー、その、汚いノートって見せたくないだろ? ……まぁ後は、お前が俺の字を褒めてくれるから、それが嬉しいのもあるけれど」
ぽかんとする彼を見て、やってしまったとさらに戸惑い、言うべきでなかった言葉がまた口からこぼれる。
俺は何を言っているのだろうと笑って誤魔化すと、彼の口がきゅっと結ばれた。
確かに変なことを口走ってしまったものの、彼も笑って流してくれればいいのに。笑顔とはかけ離れたその表情が急に怖くなった。
持っていたシャーペンを机に起き、彼が体ごと俺を向いた。俺はついていた肘を戻し、手を膝の上で丸める。何を言われるのかと息を呑んだ時、彼がその手に自分のを重ねた。
「君が好き」
はっきりとそう呟かれた言葉に反し、重ねられた手は震えている。
「……え」
「好き、だよ。好きなんだ……」
彼の言葉が一文字ずつ頭に流れる。文として理解するのに時間がかかった。
嘘だろうと、一瞬過ぎったその考えは間違いだとすぐに分かった。
今にも泣きそうな彼の顔を見たら、俺と同じ気持ちでいてくれたのだと、涙が溢れる。
「いつ、から……?」
「分からない、……ごめん、変なこと、言って」
ああ、叶わないものだとそう思っていたのに。俺は夢でも見ているのだろうか。
「お、俺も、」
「え……?」
ずっとずっと考えていた。でもそれは意味のないことで、初めから決まっていたんだ。
想いに答えが出せるのかなんて、辿り着く先はいつだって彼が好きだとそれしかないのだ。
そしてこれからもきっと、変わることはないだろう。
「俺も好きだ」
ボロボロと溢れた涙で濡れた手で、彼の手をそっと握り返した。
E N D
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