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想いの先に。続編(2)

◇ 席替えが行われる度、隣の席でなければノートを貸す役割はきっと俺でなくなると、それが悲しい気持ちと、解放されれば少しは楽になれるかもしれないとそんな気持ちで複雑になるも、結局は定められた運命なのか俺が毎回隣になってしまう。 友だちとして特別に見られたいと大切にしてきたノートの繋がりだけれど、これだけに縋っているのもどうかと最近悩み始めるくらいには、彼への想いが膨らんだのだと自覚してはいた。 でもこれだけしかないのだ。これ以上は求めてはいけない。そうしてずるずるとこの気持ちと付き合っていくしかないのだから。 「この後は予定何もないし、ゆっくりでいいよ」 「……ありがとう、」 今日の最後の授業が数学で、俺はまたいつものように彼にノートを貸すことになった。嫌いな数学を家に帰ってまでする予定はないのに、持って帰るから貸せない、そう嘘をついた。後で写真を送るからと、メールをする口実にするつもりが、なぜか今ここでノートを写すことになった。予想外の展開。彼と二人教室に残っている。 「お前、数学の時間毎回寝るよな」   沈黙のままでいいのか、何か話をした方がいいのか、二人だけの時間に慣れていない俺は、迷った末にそう話しかけた。 「眠くなるんだ……。ノート、面倒だよな? ……ごめん」 謝らせたかったわけじゃあないのに、彼に申し訳なさそうに謝られる。 「……ううん、それは全然いいんだ。お前に後で見せるからって俺、丁寧に書く癖がついちゃってさ」  「……え、」 慌てて否定すると、余計なことまで口走ってしまった。

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