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朝目覚めると、大嫌いなヤツが隣で寝ていた。しかも気持ちよさそうにすやすやと。 どちらかが女の子ならともかく二人とも成人男性。しかも目の前で寝息を立てているのはガタイのいい野郎だ。ベッドが狭くて狭くて仕方ない。そもそも無理矢理転がり込んできておいてよく堂々とベッドで寝ようだなんて思えたな。 相変わらずすよすよ安らかな寝息を立てるアホ面に苛つく。 「……おい」 鼻を摘んでやると、息苦しかったのかようやく目を開けた。欠伸を漏らし、ふとこちらを見上げてきた。 「おはよう。あい」 「その呼び名で呼ぶんじゃねーよ」 早瀬(はやせ)藍季(あいき)という名前から、子どもの頃からよく省略されて『あい』と呼ばれた。女子みたいでそれが嫌で嫌で仕方なかった。だから中学校に上がってからは名字で呼ぶように主張した。そんな中、唯一『あい』と呼び続けたのがコイツ――佐山(さやま)千草(ちぐさ)である。 中学時代に憧れ、その広い背中に焦がれ――そして藍季の心に深い傷をつくった張本人。 佐山の髪を掴み、寝惚けた顔を強引に持ち上げさせる。ああ、なんて腹の立つ、ぼんやりした顔をしているのだ。 「さっさと出てけよ、佐山」 「……ん」 佐山は小さく頷き、もぞもぞと布団から這い出した。上半身裸だった佐山は床に落ちたシャツを拾い、頭から被った。 なんでこんなヤツと一晩を明かしてしまったのだろう。胸がじくじく痛むのはきっと気のせいじゃない。

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