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第二章 ボーダーライン4

 カーテンの隙間から差しこむ柔らかな日差しを受け、宏輝はまどろみの中から目覚める。腕を伸ばして枕元に置いたスマートフォンで時刻を確認すると、午前七時半を少し過ぎていた。この時間ならもう少し寝ていても一コマ目の講義には充分間に合う。宏輝は睡魔に負け、もう一度目蓋を閉じようとするが、敏感な鼻が台所から漂う味噌の香りを嗅ぎとり、今度は身体ごと起き上がった。 「ヒロ、起きたのか?」  宏輝の気配を察した将大が、菜箸を片手に寝室へと顔を出す。将大は何時に起きたのだろう。寝起きの宏輝とは違い、シンプルなワイシャツの腕をまくり、ベージュのスラックスにはアイロンもかけてあり、どこか大人びた印象も受ける。寝癖がつきやすいと嘆いていた短髪でさえ、しっかりと整えられている。そんな将大と自分とを比べてしまい、宏輝は少し落ちこんだ。 「ヒロ、どうした?」 「マサくんが格好良くて嫉妬しそう」 「寝ぼけているのか?」 「そうかもしれない」  嘘だ。宏輝は心の中で舌を出す。自身に頓着しない将大は、自分の容姿が平均値を上回っていることに気づいていない。だからこそ、長い間宏輝は将大の傍にいることができるのだが。 「布団はそのままでいいから、先にメシにしよう。ヒロ、食べられるか?」 「うん、お腹すいた」  宏輝は腹をさすって空腹をアピールする。子供らしいその仕草に将大は小さく笑い、「すぐにできる」と言い残して台所へと戻っていった。

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