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第二章 ボーダーライン5

 将大と共に彼のアパートを出た宏輝は、ふたりで大学へ行き、一緒に午前中の講義を受けた。  そして、今ふたりがいるのは食堂の奥のほうにある、四人掛けのテーブルである。昼時とはいえ学生たちは出入り口や配膳口の近くの席を確保するので、奥に行けば行くほど閑散としていた。  宏輝と将大はどんなに食堂が空いていようとも、決まって奥の四人掛けのテーブルを選ぶ。そうして互いに斜向かいに座り、一定の距離を保って食事をするのだ。これはどちらともなく始めたことで、ふたりの間では暗黙の了解になっている。他人との接触を恐れる宏輝のためのルールだ。  宏輝はAランチを注文した。日替わりのランチはご飯と味噌汁。小鉢がついており、メインを二種類の中から選べるのだ。この日はAランチが鮭の塩焼き、Bランチがチキンカツだった。揚げ物があまり得意ではない宏輝は迷うことなくAランチを選んだのだ。この品数で三百五十円という学生に優しい価格設定となっている。もちろん味も保証されていて食の細い宏輝でさえ、頻繁に通うほどだ。  将大も宏輝と同じAランチを注文する。将大はいつも宏輝と同じものを頼むのだ。前に宏輝は「マサくんも好きなもの食べればいいのに、どうしていつも僕と同じものを食べるの?」と尋ねたことがある。それに対して将大は「選ぶのが面倒くさい」とだけ答えた。いかにも将大らしいその返答に、宏輝はクスクスと笑った。 「いただきます」  斜向かいに座る将大と同じタイミングで、小さく手を合わせる。それからは互いに一言も話さずに、黙々と昼食をたいらげた。

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