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よもつひらさか 2
ふ、と、意識が浮かぶ。
ゆらゆらと揺れている、馴染みのある感覚。
きちんとした拍ではなくて、4拍子の筈なのに3拍目が時々跳ねる。
愛馬の足拍子。
「こいつは粘り強くて情が強い、くせがあるけどいい馬だ」
幼いころから世話になっていた厩番の老爺が、そう言っていた。
俺の相棒、かさね。
見習いから騎馬隊に移ってあの人と疎遠になって、それからずっと寄り添っていてくれたぬくもり。
俺があの人のものになって、あの人が遠くへいってしまって、騎馬隊から本宮隊に戻されても、変わらずにかさねは俺のそばにいる。
ゆらゆら
ゆらゆら
かさねの歩みに合わせて、身体が揺れる。
揺れながらぼんやりと周囲をうかがった。
草原。
視界が定まらなくて、遠景が見えない。
山の形がわかれば、どのあたりにいるのかくらいはわかりそうなものなのに、目に入るのはただ、草原だけ。
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