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よもつひらさか 3

ゆらゆら ゆらゆら 目の前には愛馬の首と後頭部。 そして。 不安定に揺れる身体が落馬しないのは、背後で支えてくれている人がいるからだ。 視界に入る、その腕。 剣は教えてもらった。 何度か連れ出されて、手合せをした。 一見優しげなたおやかな姿なのに、重い剣をふるう人。 馬はそのうちにといわれて、ついぞ直に教えてもらうことはかなわなかった。 厩番と一緒に馬の世話をして、その時に一度乗せてもらっただけだ。 鞍の前に俺をのせて、背後からあの人が手綱をとった。 今のように。 そんなはずはないのに。 そう思うのに、背後にある体温が、懐かしい。 「気がついたか?」 耳元で声がする。 聞きたかった声が。 もう、聞こえるはずのない声が。

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