1 / 25

1.バツなし三十路男、ひとりぼっちのバースデーを迎えて真剣に悩む。

 今日はひとりぼっちの誕生日。  今日まで長いこと恋人がいなかった。  最後に付き合ってた人と別れてから早七年。  気が付けば中年。  まだギリ二十代に間違われる、自他ともに認める童顔。  巷では「三十歳まで童貞だったら魔法が使えるようになる」という伝説があるが、該当しないただの三十路にその望みはなし。  恋もしてないな……  いい子だなって思った子はだいたい他に好きな人がいるか、男がいた。そうだよな。オレがかわいいって思った子は他の奴もかわいいって思うだろうし、オレがこの子いい子だなって思った子は他の奴もいい子だなって思うだろう。だから余ってないんだろうな。タイミングさえ合えばフリーになった時が狙い目だけど、一度振られた相手にそこまでの執着心はない。毎日同じ顔ばかりで人の出入りがほとんどない職場じゃ新しい出会いなんて期待できないし。  もうどうでもいいや。現世は諦めよう。来世に期待しようっと。  言うまでもないが三十歳になったオレは魔法が使えない。オレが生きてるこの世界に三十路で独身、彼女いない歴七年目の男を哀れんで、神様から特殊能力を授けられるとか、朝起きたら超ハイスペック男子になってて、女にはモテモテ、会社に行ったら業績を認められ、さらには大企業のヘッドハンタ―に引き抜かれ、そこからエリートコースまっしぐら、そこで知り合った美人受付嬢と恋に落ちて恋人になりその子と結婚し、子供は二人作り、駅近で閑静な住宅街に庭付き一戸建てを購入し、そこでモフモフの小型犬を飼い、美人の奥さんとかわいい子供とかわいい犬に囲まれた幸せ家族の典型生活ができるようになるっ! ――間違ってもそんなことは起きない。  やっぱ来世だ。来世に期待しよう。来世っ! 来世っ! 来世っ! 来世っ!……  なんて前向きなんだ。泣けてくるぜっ……オレ、がんばれ!

ともだちにシェアしよう!