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2.バツなし三十路男、誰でもいいから付き合いた~~い!
「誰でもいいから付き合いた~~い!」
と思いながら結局かわいい女の子ばかり見てしまうオレ、バツなし、三十路。四十路までのカウントダウンは始まった。また一人、知り合いが結婚した。
何、中学の時の幼なじみだと? 同窓会で再会→意気投合急接近→ゴールインパターンか? そんなの残り物はブスかハゲかデブのおじさん、おばさんしかいなかったぞおおおぉおおーー!! 巷じゃマッチングサイトなんてのが流行ってるが、あんなものイケメン、高収入男子じゃないオレは金を溝に捨てるぐらい無駄な行為だぞ!? てかなんでこんなに必死こかなきゃならないんだオレは!? 親世代はもっと楽に結婚してるぞ? 親戚もなんだかんだ言ってある程度の歳になったら結婚してるし、オレと同世代で結婚してない奴なんか身近で会ったことないぞ?
『三十代、四十代で独身、パートナーがいない男性、女姓の数』『三十代、四十代で一人も交際した経験がない男性、女性の数』が増加中というあのデータは本当なのか疑うぞ。あれこそ都市伝説じゃないのか? そんな奴どこにいるんだ? オレに紹介しろ! 顔普通、収入普通、超普通スペック男子の掘り出し物が此処にいるぞ~~!
お~~い、日本の独身女性のみなさん聞いてますか~~? 腹出てないし、やせ形だが健康診断引っ掛かったことないぞ~? 剥げてないし、髪サラサラだぞ~? 借金ないぞ~? 女子に写真とか見られるといつも「優しそう」って褒められるぞ~? お~~い!
・・・・・・――――――あれ、ここは無人島か?
っっっいやだー、このまま死にたくない~! 天涯孤独、孤独死はいやだああああぁぁあーー!!
くそぉ、こうなったらもう人と付き合うこと自体諦めて、べらぼうにかわいい猫か犬でも飼おうかな! とまで考えている。そうすれば出逢いが増える。例えばこんな風に。
――犬のお散歩デビューしたオレに
「こんにちは、かわいい~。何歳ですか?」と犬の散歩で通りかかった若い女性が声をかけてくる。
「四ヶ月です」と答えるオレ。
「触ってもいいですか?」
「どうぞ」
女性がしゃがんでオレが連れている犬を撫でる。
「かわいい~」
「お宅のワンちゃんは何歳ですか?」
「三才です」
「へ~、ずいぶん大人しいですね。女の子ですか?」
「男の子です」
「あ、そうなんですか……」とちょっと気まずくなって苦笑するオレ。
「はははは」
「あははは」
オレと女性の笑い声が重なる。
「お宅のワンちゃんはどっちですか?」と女性が逆に尋ねてきてオレが答える。
「男の子です」
「そうですかぁ、名前は?」
「マロです」
「うちの子もフルーツの名前なんですよ~!」
「も?」
「うちの子“もも”っていうんです」と女性が答え、オレは察した。
「うちの子の名前はフルーツじゃないですよ」
「え?」
女性がポカンとする。この人かなり天然だ。マロンは木の実だし。
「うちの子はマロンじゃなくて、マロ。眉毛がこれだから」
オレは子犬を抱っこして「ほら」と女性にその平安時代の人――麻呂みたいな額の模様を見せてやる。
「え?」
女性が大仰に目を見張って驚く。
「わあ、ほんとマロみたい~!?」
「かわいい~!」とさらに歓声を上げる女性。少しうちの犬を撫でた後、去り際に彼女は言った。
「いつもここ、お散歩してるんですか?」
「いえ、今日が初めてです」
「あ、そうなんだぁ!?」
いちいちリアクションが大きくてかわいい人だな。
それからその女性と犬の散歩中によく会うようになり、徐々に仲良くなって、ある日一緒にドッグランに行くことに。オレの車で。
そこから急接近して、ももちゃんママからマロくんパパに告白し、二人は付き合うことに。
という馴れ初めで二人はゴールイン! でハッピーエンド~♪
犬を飼うとこんなメリットが期待できる!
――だがオレは知っている。そんな出逢いなど期待できないと。散歩しているのはほぼ主婦だし、性別年齢さまざまな人が来るドッグランに行き、そこで若い女性がいたとしても、大抵恋人連れだということを。そしてそういうプライベートがうまくいってる人間たちを見ていると、余計寂しくなるということを……
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