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25.バツなし三十路男、恋に堕ちる?【YOU告っちゃいなよ~編】

━━━☞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 露句郎はきっとピンチをピンチ(別の)に変える運の持ち主ww ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・━━━☞ 「ろく」  月曜の朝だった。営業部のデスクに向かって廊下を歩いていると、名前を呼ばれてオレは足を止めた。みしっとした感覚が首を襲い、顔を歪める。身体のあちこちが軋んでいたオレは、振り向けなかった。そこに海理が駆け寄ってくる。 「おはよ♪」と背中をポンとされ 「あぎゃっ!?」とオレは目を剥いて硬直した。 「ん、どうした?」 「首動かせないの!」 「なんで?」  困惑する海理にオレはちょっと切れ気味に答える。この質問に悪気はないとわかっているが、オレは目だけ動かして海理を睨んだ。 「土曜スカッシュやりすぎて、体中がひどい筋肉痛なの……」 「ふ~ん」  海理がひょうひょうとした声を漏らす。 「スカッシュってあの、屋内でやるテニスみたいなやつ?」 「そう」 「へ~、誰とやったの?」 「潮崎さんの“元カノ”」 「元カノ? なんで元カノと」  オレは事の経緯を説明した。  塩崎さんが趣味でスカッシュをやっていて、じゃあ今度一緒にやろうという話になった。で、日曜潮崎さんが通っているジムに連れてってもらった。 「卓球やってたんですよね」 「はい、下手くそですけど……」 「だったらすぐに勘が掴めると思いますよ」  そこでスカッシュのやり方を教わり 「わはははは、スカッシュ楽しーい! はまりそう~」 「でしょう?」  わちゃわちゃキャッキャとプレイを楽しんでいると 「いっしょにやろう」  そこに刺客が――……  潮崎さんとオレが振り向くと 「“ゆの”?」  潮崎さんの“元カノ”だった。この前ビアガーデンにいた子だ。なんでここに……? まさかストーカー!? 怖い怖い怖い、嫌な予感しかしないんだが、とオレの胸はざわついた。  元カノは『ゆのちゃん』といい、彼女はオレに試合を申し込んできた。 「いやいやいや、オレ今日初めてスカッシュやったし、まだ試合なんてやれるレベルじゃないんで……~」とオレがやんわり断るもゆのちゃんは 「大丈夫大丈夫」とニコニコ。 「それに私、“女”だから」とそこを強調してきた。いや、だが、しかしっっ!  そのウェアから剥き出しの腕や太腿の筋肉たるやアスリートの如しっ!  そのボールの扱いたるや、ラケットでポポンと軽快に叩いてドリブルさせる余裕っぷりなど、ちょっと見ただけで『こやつ、デキる!?』と一瞬で見抜いたオレは、『この女、卓球界でもへたっぴ部員だったこのオレを、スカッシュコートに沈めるつもりだな!?……恐ろしいオナゴめっっ!!??』 と脅威を感じた。 「で、どうなったの?」  海理に促され、オレは続きを語った。 「ハアハアハアハア……っっ!」  左右に揺さぶる激しいラリーにオレは翻弄されそうになるも、「おとこ」のプライドで必死に暴れるボールに食らい付き、その結果……  3ゲームやって「11:2」「11:4」「11:3」でいさぎよくル●ッサ~~ンス♪←乾杯(完敗)という成績をおさめたのであーる! よくできました。パチパチパチパチww 「スカッシュだけにスカッとしたわ。わはは!」 「がんばったな、ろく」と労をねぎらいオレの肩に触れる海理。 「あぎゃっっ……!」 「あ、ごめんごめん、痛かった?」 「うぅ、痛くしないで……」と涙ぐむオレ。 「よしよし」 「あぐっ!?」 「え?」 「頭ポンポンもダメ! 響くからっっ……」 「あはは、ごめんごめん」と言って海理がオレの頭から手を離す。  並んで廊下を歩き出した。 「ゆのちゃんて何歳?」 「29」 「29かぁ……」と含むように言う海理。いや、わかる。若いと言えば若いが、彼氏がいれば結婚とか強く意識してそうな年齢だからだろう。男だってそうだ。続けて海理が言った。 「どんな子なの?」 「めっちゃ気が強くて負けず嫌い。学生時代はテニス部の主将だったらしい。潮崎さんとは大学で知り合って、付き合うようになったんだって」 「え、潮崎さんていくつ?」 「31」 「じゃあオレたちの一個上か」 「うん」 「そんで、学生の時別れたんだけど、社会人になってたまたまジムで再会して……」 「また付き合ったの?」 「ううん、復縁はしてないって」とオレは首を振った。 「ジムが同じだからたまにばったり会うことはあるらしいけど、また付き合う気はないみたい」 「気まずくないのかな?」 「え?」 「元恋人と同じジムで」 「確かに……」 「ゆのちゃん今彼氏いないの?」 「あ、どうなんだろ。聞いてなかった。でもいなそう。いたらあんなことしないと思うし」 「あんなこと?」 「お口に「あーん」て」  海理が失笑する。 「その子、要注意だな」 「やっぱそう思う?」 「思う」 「ぅぅう◇◎※Δ■×$≧※!!?っ~~」  オレは頭を抱えて呻いた。さらっと海理が言う。 「もう告っちゃえば?」 「え?」 「潮崎さんに」  え? ( ̄□ ̄;)!!エエエエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――………… 『潮崎さん』 『好きです』 『オレ……』 『男ですけど』 『三十路ですけど』 『付き合ってくださいっっ!』  なんて……  言えるかあああああああ~~~~~~~~っっ!!!!???? ――休憩時間(昼)――  昼の休憩時間に入った。社員が仕事に区切りを付けて、弁当を出したり外出したり各々に動き出す。オレも切りのいいところまでパソコン仕事をやり終えると伸びをした。左右に首を曲げてコキコキ鳴らす。さて、弁当でも取りに行くかな、と椅子から腰を上げようとすると海理がデスクの前に来て、低いトーンの声で言った。 「大事な話がある」 「え?」 「その前に、昼飯行くぞ~♪」 「お、おう……」  その前に大事な話って……? 「お前の弁当これな」とレジ袋入りの社割弁当を渡される。 「あ、りがと」  その前に大事な話って何、海理?。  なんかこわい……。 「話ってなに?」と恐る恐る尋ねるが 「後で」と軽く交わされ 「あ……っ」と手を取られ、そのまま攫われるように海理と屋上へ。  あーん、あたしをどうするつもり~?   あーれー♪ なオレだった。 つづくww

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