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24.バツなし三十路男、恋に堕ちる?【♥キュンキュンが止まらない~編】

 帰宅するとさっそくその晩、ハプニングの経緯を海理にラインで報告した。 かいり『元カノその彼のことまだ好きなのかも』 ろく 『だよな(;´Д`)どうしたらいいと思う?』 かいり『男のほうはその気なさそうだからなんとも言えないけど     のんびりしてると元カノに取られるかも・・』 ろく 『( ゜Д゜)うそ!?』 かいり『好きなら自分から誘ってみれば』 ろく 『はずかちい(/ω\)』 かいり『じゃあやめれば』 ろく 『え? もしもし     もしもーーーーし??(;゜Д゜)』  そこで返事が途絶えた。海理の思わぬ塩対応に焦ったオレは、思わず海理の携帯に電話した。プルルルル……という呼び出し音がすぐに聴こえてくる。緊張しながら出るのを待った。 『はい』  やっと電話が繋がった。 「もしもし海理、なんか怒ってる?」 『別に』 「別にって……やっぱ怒ってるだろ?」 『怒ってねえよ』とぶっきらぼうな声で海理は言った。なんか機嫌悪そう…… 「怒ってないならいいんだけど……」 『じゃあ切るぞ』 「え? てかさっきからなんか冷たくね?」  海理の溜め息が聴こえてくる。 『会社でまた会えんだろ?』 「あ、うん……」  穏やかな声で宥められ、オレは少し安心した。 『じゃあもう寝るわ』 「うん、おやすみ」 『おやすみ』  てか会社で会えるのは明後日だし……ま、いっか。  そろそろオレも寝るか。  それからぐてーっと大の字になってベッドに寝ころぶオレだった。   潮崎さんとはラインで連絡を取り、金曜の仕事帰りによくあの店で会うようになった。服を見た後上のカフェでお茶するというのがいつものコースだ。今日はコーヒーのお供に、新作メニューのメロンモンブランとチェリーのパンケーキをシェアすることにした。手際よくパンケーキを取り分けながら潮崎さんが言う。 「甘い物お好きなんですか?」 「はい、実は」と言ってオレは苦笑した。 「はは、そうなんですね」と潮崎さんが白い歯を覗かせた。 「僕も結構好きなほうなんですけど、一人だと頼みづらいですよね」 「そうなんですよね! オレも本当はパンケーキとか流行りのスイーツとか食べたいけど、男だから頼みづらくて……。ずっと我慢してたんで、やっと食べれてめっちゃうれしいです!」  ちょっと大袈裟に喜びを噛み締めるオレを見て 「あははは」と潮崎さんは笑った。  潮崎さんとのティータイムは、いつもこんな風に楽しくて心地いい。この瞬間この人となら、なんか良い関係が築いていけそうだなあと思うオレだった。城崎さんとなら……♥キュン 「かわいいですよね」 「え?」  オレはポカンとした。潮崎さんはなぜかクスクス笑っている。 「庭野さんていつもにこにこされててかわいいですよね」  うそ? ううれしいうれしいれしい~~~~っっっ!!?? オレは心の中で舞い上がる。 「オレも同じこと思ってました!」 「え?」 「潮崎さんてめっちゃイケメンでカッコいいのに、笑うとたまに無邪気な顔になってなんかかわいいなあって……」  あ、言っちゃった。言ってもうたオレ。はずっ! 「あっははは、無邪気って……」 「あ、それそれ。今みたいなのです!」 「無邪気、かなあ?」と手持ちのコンパクトミラーを見て首を傾げる潮崎さん。 「すごい、鏡なんか持ち歩いてるんですね」 「ええ、一応営業マンなので、身だしなみをチェックできるように常に持ち歩いてます」 「偉すぎる……オレも営業やってる身として見習わなくては」と焦るオレだった。ん? ふとそのコンパクトミラーを持っている潮崎さんの腕が気になった。袖の下が気になる。あの下にはおそらく逞しい腕が……手も大きくてカッコイイな。あの手で頬を包まれたい♥  「潮崎さんてスタイルいいですよね」 「そうですか?」と潮崎さんが少し照れ笑いする。 「スポーツか何かされてるんですか?」と尋ねると  コンパクトミラーをバッグにしまいながら潮崎さんは言った。 「たまにですが、スカッシュをやってます」 「スカッシュってあの、テニスみたいなやつですか?」 「そうですそうです」と潮崎さんが頷く。なんでも潮崎さんは中高テニス部だったらしく、どこまで行ったかと聞いたら、高校の時県大会のシングルスで準決勝までと苦笑して答えた。 「だから全然大したことないんですけどね」 「いやいやいや、オレ、テニスのことなんも知らないですけど、県大会出られただけでもすごいですよ~、オレなんか……」 「庭野さんも何かスポーツをされてたんですか?」  ぎくっ! やべっ、墓穴を掘ってしもた。オレは引き攣った笑みを浮かべた。 「中高卓球部でした」 「へ~、中高やってたんですかぁ。ということは腕前も……」 「いやいやいや!」と即オレは否定した。腕前なんか全然大したことない。だって 「中学の時はなんとなーくふわっとした気持ちで友達と入って、高校の時はその流れで他にやりたい部活がとくになかったんで入っただけですから。高校の時なんかめっちゃ弱小卓球部で、人気がなくてオレたちが三年になった時は部員が集まらなくて、廃部になっちゃったし」とオレは苦笑した。 「それは切ない」  潮崎さんが気の毒そうな顔をする。  オレは皮肉のようにふっと笑った。 「バスケ部に持ってかれたんです。見学に来た新入部員はみんな……。屋内スポーツの花形、女にモテる部活の代表、バスケ部にっっ」 「わかります。バスケ部は人気高いですし、モテますからね」 「ううっ」と鳴き真似をするオレを「まあまあ、パンケーキでも食べて元気出してください」と慰めてくれる潮崎さん。好きっ♥キュン   そこでオレはちょっと唐突ではあるが、思い切って気になっていたことを尋ねてみることにした。 「あの~、付かぬことをお伺いしてもよろしいでしょうか?」 「どうぞ」 「この前の元カノとは、今でも連絡取ったりとかしてるんですか?」  潮崎さんは目を丸くした。 「いいえ」と首を振った。 「そうですか~」  思わずにや~っとしてしまう感情が隠せないオレ。そっか、そうなんだと一人納得してうんうん頷く。 「じゃあ、結婚は……」 「してませんけど」  そうなんだ……。オレは希望を捨てずに次の質問をする。 「えっとじゃあ、今お付き合いされてる方は……」 「いません」 「そう、ですか」  よっしゃ! とオレは拳をぐっと握る。こっそりテーブルの下でガッツポーズした。 「?」  ふっふっふっ、これで敵が消えたと喜ぶオレ。 「どうかしましたか?」 「え?」 「なんかうれしそうなんで」 「え、そうですか? あ、このメロンモンブランもめっちゃ美味しいですよ! ちょっと食べてみません?」  陽気に言って誤魔化そうとするオレ。口を付けていないほうを潮崎さんに向けて差し出す。潮崎さんは、その薄緑色のクリームが渦を巻くモンブランの一角をフォークで抉って口に運んだ。 「うまい」と目を見張ってこっちを見る潮崎さん。少年かっ? かわい♥キュン  はあ~なんて幸せな時間だろう……。  この幸せを海理にラインで報告せずにはいられないうざい男、オレだった。 つづくww

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