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Extra. ちゃんばら
ゴールデンウィーク。蓮の実家へ顔を出すことになった。
香子さんと3人で食事をして、近況報告。
蓮は復帰早々、インカレサークル誌の特集『イケメンくん教えて♡』のコーナーにでかでかと載り、それをこっそり香子さんに持って行ったら、蓮にめちゃくちゃ怒られた。
香子さんは、俺のことを2人目の息子のように扱ってくれて、でもたまに蓮がイチャつこうとしてくるのを見ると、「よそでやりなさい」と顔を真っ赤にしたり。
ともあれ、妙な俺たちのことを温かく受け入れてくれて、とても感謝している。
蓮の部屋でまったりしていると、本棚の1番下の段に、卒業アルバムを見つけた。
「あ、これ見たい」
「えー? 恥ずかしいなあ。どれか1つにして」
幼稚園から高校まで。
きりん3組くらもとれんも捨てがたいし、おりこうだったであろう小学生の蓮少年も、きっとかっこいい高校時代の蓮先輩も見たい。
中学はお父さんのことがあるからあまり話したくないかも知れないからやめて……2分ほど悩んで、高校をチョイスした。
「……かっこいい。次元が違う」
クラスごとの個人写真で、蓮のところだけが、光り輝いていた。
ちょっと、他の男子がかわいそうになるくらい。
「何だよそれ」
蓮はぷっと噴き出すけど、別に冗談で言っているわけではない。
髪型やファッションでごまかせないからこそ、素材の良さで全てが決まってしまう。
文句なしに、ダントツでかっこよかった。
「モテたでしょ?」
「ん? んー……んー……」
答えあぐねている。嘘はつけない蓮だから、これはモテたな。
からかってやろうかと思ったけど、自分が悲しくなる気もしたので、次に行くことにする。
「何部?」
「剣道部」
「え、ほんと?」
ページをめくると、袴姿が凛々しい蓮がいた。
「蓮。ちゃんばらごっこしよう」
「え? なんで急に?」
不思議がって首をかしげる蓮に、ニヤリと笑ってみせた。
「仁井田弓弦、剣道二段」
「まじ!? そんな細っこいのに!?」
本気で驚く蓮に、ニヤニヤする。
「でもまあ、中3でやめてブランクが10年近いし、高校までやってた蓮には負けちゃうかも知れないけど」
……と口では言ってみるけど、全然負ける気がしていない。
蓮は、腕組みした。
「わざわざ挑んでくるってことは自信あるんだろ? うーん……そうだな、罰ゲームありならいいよ」
「罰ゲーム?」
「シンプルに、言うこと聞く」
「乗った!」
ひざを叩いて立ち上がった。
香子さんに新聞紙をもらって、庭へ。
「2本取ったら勝ちな」
「オッケー。かかってこい!」
礼もなく、丸めた新聞をにぎりしめ、にじり寄る。
先に一歩踏み出したのは蓮。身長差13センチ、さすがにリーチが長い。
「……っと」
とりあえず間合いをとる。
振りかぶるのは得策ではなさそうだから、胴を狙うことにした。
前傾姿勢で斜め前に踏み出し、一気に距離を詰める。
「速っ!」
驚く蓮の懐へ迷いなくもぐり込んで、手首のスナップで叩き込む。
――パシンッ
「いってー」
悔しそうに脇腹をさする蓮を、ドヤ顔で見つめる。
まだ開始1分も経ってない。楽勝か。
すると蓮が突然、変なことを言い始めた。
「オレが尊敬する建築家のひとりに、ル・コルビュジエっていうひとがいてさ。レンガのおうちの時代に、鉄筋コンのモダンな家を作ったすごいひと。そのひとが遺した名言のひとつに『建築は秩序づけること』ってのがある」
「ん?」
何の話か分からずぽかんとしていると、蓮が急に踏み込んできた。
「というのは弓弦の気を引くために言っているだけで、特に意味はない! うりゃ!」
思いっきり頭を叩かれた。
「痛った! 何すんだよ!」
腹が立ってやけくそに頭を狙ったら、あっさり小手をとられた。
「イエーイ勝ちー!」
「いまのはナシでしょいまのは!?」
「勝ちは勝ちだもん。イエーイ、勝った勝ったー」
はしゃぐ蓮に折れて、大変不服ながら、負けを受け入れた。
家に帰った蓮は、このうえなくニヤニヤして言った。
「罰ゲームなんて、エッチなのに決まってるじゃん?」
「だと思った。何?」
「いっぱいおねだりしてもらおうと思います」
ちゃんばらなんて挑んだ自分を、絶望的に恨んだ。
「はい、じゃあエッチしてくださいからスタートな。どうぞ」
「……エッチしてください」
「かっ、わいい……」
だらしない顔をする蓮に軽く蹴りを入れて、ユニットバスに向かった。
交代で浴びて、布団にもぐり込む。
顔を合わせているだけなのに、うるさいくらいに心臓がドキドキ鳴っている。
「えと、どうしたらいい?」
「これは優しい罰ゲームだから、弓弦がおねだりしてくれたら、全部そのとおりにしてあげる。だから、何でも言って? その代わり、おねだりしてないことを勝手にやっちゃダメだからな」
ちょっと泣きたくなりながら、蓮の腕をつかんで言った。
「キス、してください」
「はい」
ちゅ、と触れるだけのキスをされる。
「あの……舌。ちゅうって吸って?」
「かっわ。やば」
口を開けて舌を差し出すと、いやらしい音を立てて吸われた。そのまま舌を差し込まれて、深い口づけをする。
何かの、何かのスイッチが入ってしまった。
「……なめるから、お尻ほぐしてください」
「えっ?」
蓮は目をまん丸く開けて、そして、ゴクリと生唾を飲んだ。
「じゃあ……オレ寝っ転がるから、お尻こっちに突き出してくれる?」
「ん……」
めちゃくちゃ興奮する。我慢できずにぱくっとしたら、蓮がうめいた。
ローションを塗り込められて、指をクチュクチュと抜き差しされる。身悶えた。
「ぁ、あ……蓮、気持ちいい」
「すっごいやらしいのな、弓弦」
「はぁ……ぁ、早く欲しいから、早く指増やしてっ」
「そんなに急にしたら痛いだろ」
「らいじょうぶらから、はやく……」
なめながらねだると、強引に2本指が差し込まれた。
苦しい、気持ちいい。
「ん、ンく、……ふぅ、ん……しごいてください」
「ちょっと、弓弦……ほんと……、ぅ」
するっとなでられたら、めちゃくちゃ気持ち良くて、蓮のペニスに夢中でしゃぶりついた。
「ん、ンン、……っんく、ンッ」
「ぅあ、弓弦。そんなしたら出ちゃう」
「……ん、口の中、出して」
「うっそだろ、……う、あ……ッ」
頭を上下しながら、根本を素早くこする。
「あ、まじで……っむり、イッ……っ……!」
ペニスがドクドクと脈打って、口の中に、大量の精液が吐き出された。
「……っ、はあっ。ちょ、ゆづる、ちょっと待ってな」
慌ててティッシュを差し出してきたので、そのまま吐き出す。
「とりあえずゆすいできてくんない? キスしづらい……」
「分かった」
飲んだってよかったのにと思いながら、キッチンへ向かった。
仕切り直してベッドの上に寝転ぶと、蓮は、俺の胸をなめ始めた。
「また可愛くおねだりしてくれる?」
「ん……っ、乳首、舌でチロチロってしてください」
言いながら興奮してしまっている自分がいて、熱が下腹部に集まっていく感じがする。
「ん、……ぁっ、はぁ」
「可愛い」
「あぁ、しごいて、……ぁ」
口と左手で胸を攻めながら、右手が下に伸びてくる。握られたら、体がビクッと跳ねた。
「はぁ、ん、あ、……気持ちいい」
「すごい。先っぽぬるぬるしてる」
「……だって、きもちい、ぁっ……」
「弓弦、エッチで可愛いな」
「もう挿れて欲しいです」
訴えると、蓮は体を倒して俺の耳元でささやいた。
「足開いて、自分で抱えておねだりして?」
言われたとおりに自分で太ももを抱えて、大きく開いて見せた。
「蓮の、挿れてください」
「どこに?」
「お腹の中、熱いの挿れてください」
「……ったまんないなこれ」
ずっしりと、太いものが侵入してくる。
「ぁあ……ん、あ」
「すっげ、弓弦のなか、ぐねぐねしてる」
「ん、…はぁ、ぐちゃぐちゃにしてください」
「……っ、これ、1回イッといて正解だったかも」
蓮は、顔を真っ赤にしながら、いきなりガンガン腰を振ってきた。
「ああッ、はぁ、んっ……はげし、ぁあっ」
「激しいの好き?」
「ん、んんっ、すき、……乱暴にっ、して欲しい、ぁあっ」
「あーもうっ。舌噛むなよ」
体全体が、ガクガクと揺さぶられる。視界が揺れて、訳が分からないくらい気持ちいい。
「ぁあっ、はあ……ッ、ん、はあ……ぁ、蓮、れんの唾飲みたい」
「ん」
深いキスをしながら、口の中に唾液が注がれる。
喉を鳴らして飲んだら、興奮のあまり、蓮の背中を思い切り引っ掻いてしまった。
お腹の中、1番良いところを突かれて、あごが跳ね上がる。
「ぁあああッ、……っあ」
「イきたいときもおねだりだからな」
「はぁ、ん、……んんっ、まだ、もっとして、ん、」
「可愛い」
衝動を逃すように何度も背中を反らして、それでも熱は高まっていく。
「ぁ、あっ、もうだめ、……むり、イッちゃう」
「どうしたい?」
「あ、イ、……イかせてください」
「どういう風にイきたい?」
「お尻だけでイくから、……俺の気持ちいいとこ、見てて……っああ」
「うん、いいよ。おいで」
ガンガン突かれて、あられもない声が出る。
「ひぁ、あッ、……あ、イク、イッちゃう、……っはあ、精子出るとこ見ててくださ、ぁあ」
「弓弦、可愛い」
「はあ、んッ、……ああ、イく、イッ……っ!…………ああああああぁあぁああッ!」
体全部が、ビクンッビクンッと跳ねる。
蓮もうめいた。
「……っあ、イ……ッ……!…………っ」
長く長く絶頂の中突かれて、そのまま意識を飛ばした。
目を覚ますと、大変気まずそうな蓮が、ちょんと横に座っていた。
「……ん? 蓮?」
「お、起きた?」
「ん。……いたた」
なんだか、全身が痛い。そして冷静になったら、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
「蓮」
「怒っ……てる?」
片目をつぶって身構える蓮を見て、噴き出してしまった。
「ぷっ……あはは。怒ってない」
「よかったー……絶対調子乗りすぎたと思った」
心底ほっとした顔の蓮は、なんだか可愛くて仕方がなかった。
「でも、もう2度とちゃんばらはやらないよ」
「え。やろうよ。オレ普通にやったら絶対弓弦に勝てないもん。修行するから、また遊ぼ。罰ゲームなしで」
最近分かったことがある。
俺は、蓮の『遊ぼ』に弱い。
「分かった。またやろう、ちゃんばら」
「勝つまでやるからな」
ずっと遊んでいたいから、絶対負けられないなと思った。
<おまけ終わり>
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