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捜索2

(仕方ない。県内限定の掲示板をチェックしてみるか――)  ブックマークしていた掲示板にアクセスし、1ヶ月前ほど日付をさかのぼって、書き込みされている内容に目を走らせた。  以前ここを覗いたときは『我慢できないくらいシたいです。〇〇で待ってます』や『ヤらせてくれる人募集中』など、下半身の処理に困ったヤツばかり集まっている、ハッテン場状態だった。  自分と同じゲイが県内に大勢いるなと失笑し、どうしても困ったときに使おうと考え、高橋はそこをブックマークしていた。  読み進めても下半身に関する出会い系のコメントだと、冒頭を読んだ時点で分かるのに、いつもの癖で最後まで読んでしまう。そのせいで、無駄に時間がかかってしょうがない。 (まったく。何を期待して、最後まで読んでしまうんだか……) 「チッ、嫌になるな」  仕事でもないのに、妙なところにクソ真面目な自分に苛立った瞬間、おかしな文章が目が留まった。変なところに句読点があるせいで、すごく読みにくいものだったのだが――。  それは今から3日前のコメントで、告白するかどうか迷っている文面だった。 『高校生です。テニス部の、1つ上の、先輩の事が、すごくすごく好きなんです。きっかけは、新入部員として、入部した僕を指導してくれたことなんですけど、先輩が体に触れるたびに、ドキドキして、緊張します。他の新入部員に比べると、明らかに、自分に触っている感じがして。でも意識しているから、そう感じてしまっているところも、あるかもです。この気持ちを告げたら、避けられるかもしれないと思うと、すごく怖い。でも先輩を思う気持ちが、日ごとに大きくなってきて、どうしていいか分かりません』  そんなコメントに、たくさんの返事が書かれていた。出会い系のコメントの数を、簡単に上回るくらいに。  告白を支援する意見と反対する意見が、同じくらいになされている様子に、高橋は瞳を細め、じっと考え込んだ。  人を好きになったことがない彼にとって、この高校生のコメントは、意味不明な点が多くて、まったく理解できなかった。恋愛なんて、脳の誤作動から起きているとすら思っている。

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