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捜索3

 高橋が経験したことのない、恋愛するという感覚。それが分からない以上、このコメントに返信ができなかった。しかし見る方向を変えることにより、すんなりと答えが出たりする。  心よりも躰――すなわち性的対象であるかどうか……。  相手がゲイなら問題ないことだがストレートの場合、同性にやたらと躰に触れられるのは嫌悪感に繋がる。自分の性癖を隠しながら、相手の反応を窺うことは結構至難の業(わざ)だ。  困難なのはそれだけじゃなく、恋は盲目あるいは麻薬と言ったもので、人は恋心を抱く相手を見ると脳の一部の領域が活発になり、判断を含む多くの部分の機能を緩めるという実験結果が、海外の大学で出ている。その理由は脳がより生殖活動に集中するために、判断能力を鈍らせるらしいというんだから、結局人間は獣と一緒ということだ。  それゆえに書き込みした高校生も、恋をしたことにより判断能力が鈍り、他の部員と同じように先輩が触れながら指導しているにもかかわらず、見誤っている可能性がある。  そう高橋は判断したのだが――。  恋に夢見る若者に現実を突きつけるなんて、そんな無慈悲なことをしないさと苦笑しながら、当たり障りのないコメントを残しておいた。 『まずはその先輩がゲイであるかどうか、確かめることが先決でしょう。先輩が君に触れた数だけ、同じように接触してみては? 嫌がる素振りを見せずに先輩が接してきたら、脈があるかもしれませんよ』  あわよくば、この高校生が個人的に高橋にアプローチをしてきて、直接逢いたいと申し出たなら、手取り足取りいろいろ教えてあげるのにという下心でコメントしたなんて、誰も知る由がない。

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