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第10話
「慎也、」
今日は、俺を選んでくれてありがとう。俺を、一番にしてくれてありがとう。
片想いは苦しいことが多いけれど、優しい慎也を見ていると、この人を好きになれて良かったと心からそう思う。
「慎也」
「ん? どうした?」
「俺、ケーキが食べたい」
結局パーティーで食べられなかったから、と言い訳を並べると、「急に帰った宙が悪い」ともっともな指摘を受けた。そこを突かれたら痛いと唇を出して拗ねて見せれば、慎也はふわりと微笑んで俺の頭を撫でてくれた。
「じゃあカフェやめて、家でケーキ一緒に食べよう。ほら、俺ん家の近くに可愛いケーキ屋あるだろ? そこで買って帰ろうぜ」
「うん、」
「こんなことなら最初から二人でクリスマスパーティーすれば良かったな。俺は元々そのつもりだったけど、二人でケーキ食べようと言えなかったし、お前はパーティーに行こうって言うしで、言い出せなかった」
「え?」
「来年こそは最初から二人でやろうな」
甘く、低く、大好きな声が、とびきり嬉しい言葉とともに心に染みていく。心はダメでも頭では深い意味はないと理解しなければ、だなんて、そういうことを考える気もなくなった。どうせなら全身で喜んで、それをいつかの日のためのエネルギーにしたい。
……慎也、好きだよ。自分が言ったんだから、来年のクリスマスまでは俺を一番にしてね。親友でいい。それ以上なんて贅沢は言わない。
「宙」
「ん?」
「雪がきれいだな」
「……ん」
はらはらと降り続く雪に、慎也が手を伸ばす。
……いっそのこと、今日このまま時間が止まればいいのに。サンタとやらがプレゼントをまだくれるというのなら、俺はこの時間が永遠に続くことを望むのになぁ。
END
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