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01*副隊長の苛立ち*

 雪美眞白(ゆきみましろ)は中性的な美貌の持ち主だ。  艷やかな黒髪と、黒真珠をはめ込んだ瞳。白い肌はまるで雪のようで、口紅いらずの赤い唇が際立つ。  まるで傾国の美姫のように美しい男の子だが、性格にやや難あり、だった。 「くっそ……あの忌々しいマリモのせいで」  ほんの一週間前まで、眞白はそれなりに平穏で幸せな日々を送っていた。  それはこれまでも、これからも続いていくはずだったのに、季節外れの転入生のせいでガラガラと崩れ去っていった。  もともと苛烈な性格ではあったが、なにもなければツンと澄まして、楽しいときは笑みを浮かべることもあった美貌は、ここ二、三日、苛立ちとストレスで顰め面しか見せていない。  時折見せる笑顔が楽しみだった密かなファンは、美しい人から微笑を奪った原因に毎日呪詛を吐いているとかいないとか。  声すら転がった鈴のように美しい眞白は、とにかく喧噪の酷い校舎から離れたくて仕方なかった。  嵐は先週の木曜日に学園に到来した。  春川姫司(はるかわひめじ)という名前の嵐は、転入初日に生徒会役員を攻略(コンプリート)し、次々と学園で人気の生徒たちを虜にしていっている。  あんな、あんなモサモサ頭に瓶底眼鏡をかけた一昔前のマリモにだ!  完全無欠の生徒会長様を始め、ツンドラの副会長様、小悪魔チャラ男の会計様――何よりも、何よりもショックだったのは我らが愛しの書記様までもがマリモ野郎の金魚の糞になってしまわれたなんて考えたくもない。  寡黙でマジメで大人っぽい書記様が、一生懸命マリモのご機嫌を伺っていると聞いただけで卒倒してしまう。  学園の和を乱す嵐の名前なんかシメジで十分だ。姫なんてもったいない。  嵐が到来してからというもの、どこもかしこも大騒ぎだ。  ドコドコの親衛隊が制裁を下した、だの、その騒ぎにかこつけて強姦未遂が多発、だの。  不愉快極まりない。

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