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講堂から出た紅葉は校舎裏に広がる森林公園を歩いていた。
校舎や校庭の他に、森林公園や噴水などがいくつも存在する。
もともと真面目に参加しようと思っていなかった紅葉は、お気に入りの場所で時間を潰そうと考えていた。
――というのにだ。
突如現れた『ヒツジ役』のせいで、走り回る羽目になっている。
悲鳴を上げる足を緩めた紅葉はその場に尻餅をついた。
逃げ回っている内に追いかけてくる人数が増えて逃げ切るのも辛くなってきた頃、めったに人の訪れない場所に身を潜めていた。
「はぁ……」
体力は底をつき、逃げるどころか立ち上がることすらできない。
座った瞬間に膝が崩れ落ち、ふくらはぎが痙攣するまで走るなんて二度としたくない。
来年の新入生歓迎会は絶対立食パーティーで押し通そうと決意した。
全力疾走したために汗で体がベタベタだ。
頬も熱く火照り、息も荒い。
喉渇いた、と呟きが落ちた。
追いかけてきているのが小柄な生徒だけならここまで必死になることはなかった。
しかしそれに混ざって紅葉よりも体格のいい運動部の生徒がいた。
親衛隊のような熱の篭った甘い視線なんてものじゃなく、ギラギラと欲望に染まった目と視線があってしまった時は鳥肌が立った。
明らかに彼らは、自分を性的処理対象として見ている。
くすぶる苛立ちに舌を打ち、乱れた息を整える。
火照る頬に走って乱れた髪を撫で付けて直しながら、うなじにかかる後ろ髪が邪魔だなぁと文句を垂れながら時計を確認する。
予定では落ち着けそうな場所で読書で時間を潰そうと考えていたのに『ヒツジ役』で台無しだ。
額ね関係なく、役付き生徒に与えられた、ウサギからもオオカミからも狙われる一番面倒くさい役だ。
どうせ考えたのは愉快犯な美化委員長とかに違いない。
ほんの少しだけ体力が回復した紅葉は、ぐうと腹から間抜けな音がきたことに小さく唸った。
朝ご飯食べときゃよかった。
どうぜサボるつもりだからといつもどおり朝食を抜いたのが仇になった。走り回ったのも相まってか腹は空腹を訴える。
あと十数分逃げ切れば昼休憩だ。そしたら誰か誘って食堂にでも向かおう。
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