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龍介さんに最初に会ったのは、俺が高校生の時、小さなライブハウスでだった。 会ったと言っても、俺は数百人の観客の中で、龍介さんはステージの上だった。 意思の強そうなギョロリとした目、ツンと形の良い鼻、その見かけと同じ様に、透明感があり同時に強さを感じさせる歌声。骨張った大きな手から奏でられる繊細な音色。ステージ上で堂々としていて、媚びた様子もなく、時折笑う時は口の端を歪める様に笑う。全てに魅了された。同じ高校生なのに、憧れもして。 そのライブ後、真似してバンドも始めた。 俺が専門学校に入る頃、龍介さんのバンドがメジャーデビューして、やっぱりなと思うと同時に寂しさも感じた。これからますます有名になって、色々な人を魅了して、小さなライブハウスで龍介さんの演奏は観れなくなるんだろうと。そして俺は自分の進路を決めた。 龍介さんの所属するレコード会社に俺は就職した。龍介さんのマネージャーになれた時は凄く嬉しかった。最初はこちらを見もしなかった龍介さんが、いつのまにか満面の笑みを見せてくれるようになって。大変でも、充実した日々だった。 なのに…。いつの間にか、俺と龍介さんの間に、歪みが生まれていた。変わる龍介さんの要求。 「水買ってきて」 「代わりに謝ってて」 「スケジュール変更してて」 「うどん作って」 「ずっとここにいて」 「彼女と別れて」 「キスして」 「Ωになって」 今は龍介さんといるのが辛くて、苦しい。 龍介さん、俺、あなたには憧れていたけど、そうじゃないです。 いつの間にか、龍介さんが怖いと思うようになって。龍介さんから逃げる事ばかり考えるようになったんだ。 --- 龍介さんは、ゲホゲホと咳き込む俺の後頭部を掴み無理矢理立たせ、俺の耳に口を寄せ言った。言葉を直接、俺の脳内に流し込む様に。 「蒼、これでやっと俺のものだね。」

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