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第14話
「なぁ、夏休みどっか行こうぜ」
「それさっきも聞いた」
季節は移ろい、初夏となる。一葉がこちらに来てから、初めての夏だ。
前にいたところより田舎なここは、コンクリートが少ないせいか、北の地域のせいか、涼しく感じた。北とは言え、緑の青さはこちらの方が勝り、セミの声も響いている。
誰もが思わないだろう、都会でも類を見ない美男子が、こんな田舎に2人もいるだなんて。一葉は箸を止め、目の前に座る理玖と奏矢を見た。しかも、こんな普通の男が彼らの友達とか、ますますあり得ない。
すると、和葉の視線に気付いたのか、奏矢がこちらに顔を向ける。田舎とは言え、20℃後半の気温なのだから、もう少し暑そうな顔をすればいいのに。奏矢は全く持って涼しそうだ。
「一葉、どうかした?」
首を傾げると、奏矢の銀色のピアスが反射して光った。本当に、絵のように綺麗な男の人だと思う。天使の輪を持つ黒髪に、透けるような白肌、流れるよな綺麗な瞳、小ぶりな鼻と口。奏矢には、性別を超えた美しさがあった。
「またボケてきたんだよ」
そうやって一葉を揶揄う男は、また美青年だった。ホワイトアッシュの髪を風に靡かせ、耳には軟骨にまでピアスが開いていた。一見不良のような外見なのにそれを感じさせないのは、この男が持つ雰囲気と、上品で綺麗な顔立ちのためだろう。男らしい体格だが、顔は繊細で、憂いを帯びた目、赤い唇、真っ直ぐに通った鼻筋と、どこをとっても魅力的な男だった。
「一葉はどこ行きたい?」
「海行こーぜ」
「お前には聞いてない」
奏矢と理玖がテンポ良く会話する中で、一葉は今の生活を幸せに思った。
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