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 第1話

   ――これも運命の出会いと言うのだろうか――。  一月も終わりに近づいた朝、珍しく雪が積もった。  朝一の講義が入っている俺はいつもの通学コースである公園を歩いてた。  見慣れた風景も雪景色というだけで、すごく新鮮で神聖なものに思える。  でも、もう少し日が差せば溶けちゃうんだろうけど。  空を見上げれば雪雲はもうどこにもなく、晴天が広がっている。  ひとときだけの幻のような雪景色を目に焼き付けておこうとしたとき、植え込みの中に小さな雪うさぎがあるのを見つけた。  雪で作られた丸い体に葉っぱの耳、ナンテンの実の赤い目。なんともかわいらしくフォトジェニックだ。  俺はしゃがみ込んで、雪うさぎと見つめ合う。 「こんなところにいると、おまえすぐに溶けちまうぞ」  雪うさぎを壊さないようにそっと持ち上げると、鬱蒼と茂った樹木の奥の、一日中日が差さないだろう場所へと移してやった。         ***  マンションのインターホンがピンポンと鳴った。  レポートを書いていた顔を上げ、時計を見ると時刻は深夜の一時。  どうせ終電にあぶれた悪友の一人が泊めてくれと来たんだろう。  そう察しをつけ、小さな覗き穴から外を確認することもせずドアを開けた。  だが、俺の予想は外れ、そこに立っていたのは、恐ろしく色が白く、目が大きく、顔が小さい……早い話が美少女のような美少年だった。  あれ……? こいつ……。  奇妙なデジャビュ。  高校生くらいに思える少年は俺を見ると、さくらんぼ色の唇をにっこりと微笑ませる。 「こんばんは、恩返しに来ました。昨日の雪うさぎです」

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