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第2話
「…………」
俺は超常現象の類は一切信じてないし、ファンタジーに興味もない。
こんなことを言われて、はい、そうですかと納得できるはずがないのに。どういうわけか、少年の言葉は俺の心にストンと落ち着いて。
「…………とにかく、入って」
俺は雪うさぎの化身(?)を部屋の中に招き入れた。
暖房をきかせた部屋は雪うさぎの体にはまずかろうと、切ろうとすると止められる。
「あ、大丈夫だよ。本体はあの公園にあるから、暖かくても全然平気。本当に優しいんだね……えっと……」
「律(りつ)……長堂(ちょうどう)律」
「律のおかげで俺、消えなくて済んだ。本当にありがとう」
「どういたしまして」
「そういうわけで恩返しに来たんだけど、俺はお鶴さんのように綺麗な反物を織ることもできないし」
「お鶴さん?」
「知らない? 鶴の恩返し」
「ああ……知ってる」
「笠地蔵さんのように豪華な品々をプレゼントすることもできないし」
「だろうな」
「だから、俺、律のお婿さんになって、尽くすことに決めたんだ」
雪うさぎの宣言に俺は呆気にとられる。
「……いや、お婿さんって、どっちかって言うと、おまえはお嫁さんって感じだろ」
突っ込むところはそこじゃないのに、呆気にとられすぎた俺はつい口走った。
「じゃ、律のお嫁さんになる」
「いや。おまえ男だろ」
「律、言ってることがちぐはぐ。……もうどっちでもいいから俺をここに置いて。俺、律のためならなんだってするから」
「いや。何もしていらないし」
俺が拒絶すると、雪うさぎはしょぼんと肩を落として泣きそうな顔になった。
「だって俺、律に恩返ししたい……それに他に行く場所もないし」
男だけど雪うさぎの顔は俺の好みの顔立ちで、こんな表情をされるとなんとなく辛い。
「……分かった。とりあえず今夜はもう遅いし、泊めてやるから」
「ん。でも、俺あきらめないよ。絶対律のお嫁さんになるから」
雪うさぎが決意を込めて呟くのを聞こえないふりをして、俺は彼のための布団を敷くためクローゼットを開けた。
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