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第11話

   雪のことで頭がいっぱいな所為か、大学へ向かう途中で俺はスマホを忘れてきたことに気づいた。  腕時計を見るとまだ余裕があるので取りに帰ることにする。踵を返して来た道を戻ろうとしたとき、声を掛けられた。 「律、久しぶりね」  ミスキャンパスで、雪のことが原因で別れた元カノだった。 「律。まだ例のあの子と付き合ってるの? あんな子供、律には似合わないわ。ね、律、金輪際あの子とは会わないって誓うのなら、あなたともう一度付き合ってあげてもいいわよ」  そう言ってピンクの口紅を塗った唇で綺麗に微笑む。  その高慢な態度の中に寂しさの欠片を見つけても。 「そんなこと誓えないし、もう君とは付き合う気もないよ」  俺の気持ちは動かない。冷めてしまった思いは戻らない。それ以前に今はそれどころじゃない。  俺の優しさや欲望、それに感情が動かされるのは雪に対してだけだ。 「律、あなたまさか本気なの?」 「君には関係ない」  俺はスマホをあきらめ、足早に彼女の傍から立ち去った。  その日の帰り道、いつものように雪うさぎの元へと寄る。  この日は暖かかったので、ずっと様子が気になっていたのだ。  空を遮る木々のおかげで雪うさぎのいる場所はそこまで気温が上がっていなかったが、なんとなく雪うさぎは元気がないように見える。  俺は矢も楯もたまらず、急いで部屋へ帰ると何事かと驚く雪を連れて、再び公園へと行く。   そして保冷剤をたくさん入れたプラスティックの箱へ雪うさぎを入れると、連れ帰り冷凍室へ入れた。  

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