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Love Memories:最後の夏9

***  部室に着いてからというもの――。 「あの……、ドレスを汚しちゃいけないから脱ぐね」  付けていた長い手袋をいそいそ外して、ドレスを脱ごうとした手をさっと掴まれる。 「なんだよ、吉川」 「俺が脱がす。ノリはそのままでいてくれ」 「カツラくらい外していいでしょ? 重いんだよ」 「ダメだ。そのままでって言ってるだろ」  う~~~っ、吉川ってばワガママばっかり。 「僕を脱がせる前に、自分のを脱ぎなよ。着るトコ見てたけど、大変そうだったよ」  故に、脱ぐのも苦労すると思った。 「ぁあ!? こんなの一瞬で脱げるって。ほら……って、あれ?」  長いマントが邪魔して、思いっきり引っかかったらしい。まったく、手がかかるんだから。 「こっち向いてよ。僕がしてあげる」 「何だかわりぃ……。今日はカッコ悪いトコばっか見せちまって」  その言葉に、ふるふると首を横に振った。 「吉川が僕のために一生懸命戦ってくれたこと、あれのどこがカッコ悪いのか理解できないよ。サッカーの試合よりも、カッコいいって思っちゃった」  引っかかっていたマントを上手いこと外し、タキシードのボタンに手をかける。 「ノリからこうやって脱がされるのも、結構ドキドキするもんだな」 「だって吉川ってば、ばばばっていつも自分で脱いじゃうから」 「だけどのんびりしすぎだ、待っていられない」  まだ途中だというのに、キスをしてきた吉川。堪らなくなった僕は、そのまま両手を首にかけて引き寄せた。 「んっ……吉川、ぅっ」 「すげぇ嬉しかった。俺の代わりに竹刀を持ってくれて。みんなの前で好きだって言ってくれて」 (あ――そういえば、大胆なことを舞台から言っちゃってたな)  目をしばたかせる僕を、ゆっくり床に押し倒してくれる。上に跨っている煌の顔に、窓から差し込む夕日が照らされてキラキラと煌いていた。 「ノリが守ってくれたように、俺も守ってやるから……。これからもずっと――」  掠れた言葉が、胸の中にじわりと染みこんでいく。 「煌、僕もずっと君のことを想っていく。守っていくから、お願――」  傍にいてと言うセリフを奪って、唇を重ねた吉川。それが意図されたことであるのが後日、明るみになるのだった。 【的のむこう側6 アオケバトウトキ】にづづく

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