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第49話(蜜月編)

 肩甲骨に強く口付けると、彼の身体は身も世もなく震えた。多分感じる場所なのだろう。自分が達する時間を遅らせるために何回か唇で辿り彼が震えた箇所は念入りに接吻を強く施した。  枕から少し頭を持ち上げた片桐は幽かな声で懇願した。 「あ、晃彦…もっと…奥・・・ま…で。奥まで来て…呉れると…脳髄まで…が…晃彦の身体を・・・感じる」  その言葉に身体だけではなく脳髄までが沸騰する。  彼の望み通り、一気に奥まで貫いた。片桐の自分よりかは少し細い肢体が風に煽られた若木の様に反り返る。汗で潤って居る身体に新たな汗が流れている。それは自分も同じだったが、快感の余り自らの汗が彼の肌に滴っていく事を自覚した。  彼は、顔を枕で隠したままだったが、少し頭をもたげて濡れた声で伝えて呉れた。 「今の…とても感じた。もっと激しく…オレの中に…来て呉れ」  要望に応えるのはやぶさかで無いが、彼の一番感じる場所を自分の物で突き、彼が感じているのを見計らってから一息に全てを彼の内部に収めた。 「あ、もう・・・」  枕越しの声が切羽詰ったものに成る。  その衝撃が呼び水になったのだろう、彼の全身が心許無く震え、再びの絶頂を極めた。  同時に絹の様な彼の内部があたかもそこが意志のあるものの様にひたりと包み心地よく締め付けて呉れる。  その心地良さに誘われて先ほどまで我慢に我慢を重ねていた禁を放つ。  身体の奥深くに熱い液体を注がれた片桐は感極まった、艶めいた声を枕越しに伝えて呉れた。  身体の一部を繋げたまま、彼の背中に倒れこんだ。  お互いの汗が気持ち良い。暫くそうしていると呼吸も元に戻って来た。  彼の肩甲骨を唇で辿ると、やはり感じるらしく時折、彼の肢体が震えた。震える箇所を入念に吸う。すると、彼の震えがひどく成った。  そっと、彼の身体の向きを変える。身体の中に自分を残したまま。  桃色に色づいた肢体は自分を誘って止まないが、時計を見ると朝食の時間間近だった。  断腸の思いで自分を彼の内部から退かせる。  彼の顔も汗で潤っていた。しかし、枕に顔を埋めていたせいで自分程ではない。顔色も上気していたので、気になっていた目の下の青みは綺麗に払拭されている。  ベッドから上半身を起こすと、彼も倣った。 「もう少しで朝食の時間だ。その前に約束を果たして欲しい」  耳元で囁くと、意味が分かったのだろう。羞恥心を隠せない様子ながらも頷いた。その後、彼の方から口付けを一つ送って来た。  一緒に浴室に入った。シャワーに二人して打たれる。  潔い彼は自分から抱きついて来、浴槽の縁に足を上げた。  その動作に衝動が抑えきれず、指で彼の秘密の場所を開いて、中に進入した。  自分の放った白い液体を掻き出す動作をして居ると、彼の感じる一点にも必然的に指は当る。必死に我慢していたようだが、それも限界が来た様で、自分にしがみ付いて来た。そして唇を合わせて来る。  唇で交わりながら白濁を掻き出して居ると、彼の両腿に白い液体が滴って行く。その様子は言い様が無い程に色っぽい眺めだった。  足を伝って浴室の床に落ちていく密度の有る粘液を未練がましく見詰めた。排水溝に入って行くその様子を暗い目つきで眺めている事を自覚した。

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