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俺は今、怒っている。
猛烈に怒っている。
ほら。怒りが心頭して、頭から湯気が立ち上ぼってるだろ?
その原因は俺の恋人……、少なくとも俺はそう思っている、我らが逢坂課長、その人だ。始まりが始まりだったから、まさか……、とは思ったけど。
課長と初めて会ったのは、入社試験の面接の席だった。慣れないスーツに身を包み、緊張のし過ぎで尿意 を催 しながらドアを開けた俺。
(……すうーっ)
「失礼します!!」
今思えば右手と右足が同時に出ていたかも知れない。勢い良く後ろ手に閉めたドアに指を挟む失態までやらかした。
「ふふっ、そんなに緊張せずに。まあ掛けなさい」
その人こそが逢坂課長で。決してかっこいい方ではないが、その穏やかで柔和な人柄にそれまでの緊張が嘘のように消えたのだった。
マニュアル通りに完璧に答えを用意していた俺に対しての質問は、友達はどれくらいいるのか、何のサークルに入っているのか、サークルは楽しいかとか割りとどうでもいいことばかり。
後で聞いてみたら、会社に溶け込めるかどうかの適性を見たのだと言われたが。とにかく、その面接で俺は恋に落ちたのだ。そして俺は面接に見事に合格し、課長とデスクを並べて仕事出来るようになった。
そして、なんとか口説いて一夜を共にしたのが一週間前。やっと俺のモノに……、と思ったのも束の間。
俺は見てはいけない物を見てしまったのだ――……。
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