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02
それは今朝の出来事だ。珍しく遅刻ぎりぎりに出社した俺は、急いでエレベーターまで走り寄った。
「……あれ? 開かない??」
気ばかり急 いていた俺は6Fのボタンを連打。やっとのことでドアが開き、乗り込もうとした瞬間――。
「……御手洗 !?」
突然、目に飛び込んできた濃厚なキスシーン。あろうことか、逢坂課長と同僚の御手洗が密室の中で絡み合っていた。
「ちょっと待ってね?」
そして、何故か逢坂課長は《閉》ボタンを押してしまう。
それから数分後――、
「お待たせ。早く乗らなきゃ遅刻するよ?」
逢坂課長は無邪気に笑い、何もなかったかのような笑顔を俺に向けたのだった。
― 昼休み ―
「おい、御手洗! 今朝のアレはなんなんだよ!」
「ん、ああ、見てたよね。忘れて?」
「あぁ ?! 忘れろだあ ?!」
「なんかさー。逢坂課長と二人っ切りでエレベーターに乗ってたらさ。ヘンな気持ちになっちゃって。そしたら課長が《閉》ボタンを押しちゃって笑ったよ」
「――去れ」
「……ん? なんか言ったか??」
「お前は便所へ去れ!」
「俺は《みたらい》だっつーの !! ……ったく」
……なるほどね。逢坂課長から誘ったわけだ。
エレベーターの中で受付の日下部さんと一緒になり、
「気にしない方がいいよ?」
と、慰められた可哀相な俺。課長のソレは一種のビョーキのようなもので、どうやら盛りが付いたら誰かれ構わず、それこそ所構わずやっちゃうらしい。
しかも日下部さんは、
「私も雰囲気に負けて、最後までやっちゃったことがあるしねー」
と、ご丁寧にも付け加えたのだった。
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